取材リポート
障がい児とイルカの
触れ合い体験
神奈川県・茅ヶ崎オーシャン ライオンズクラブ
#人道支援
#青少年支援

イルカと一緒に海を泳ぐ。茅ヶ崎オーシャン ライオンズクラブの「イルカと遊ぶ体験教室」は、障がいを持つ子どもたちにイルカとの触れ合いを体験をしてもらおうと毎年開催されている。子どもたちは特別な体験に果敢にチャレンジし、家族やクラブメンバーと共に楽しい一日を過ごした。
6月28日、静岡県伊東市にある体験型施設のドルフィンファンタジー伊東で、茅ヶ崎オーシャン ライオンズクラブ(香川比洋2024-25年度会長/28人)による「イルカと遊ぶ体験教室」が行われた。知的障がいや発達障がいのある子どもたちとその家族を対象に、2011年に始まった活動だ。
イルカとの触れ合いは、ドルフィンファンタジーが提供している人気の高いプログラム。伊東港の一角にあるいけすで、イルカの体に触れる「ふれあいコース」や一緒に泳ぐ「スイムコース」を体験出来る。施設では茅ヶ崎オーシャン ライオンズクラブの体験教室の日は貸し切りとし、子どもたちが安全に楽しめるようにスタッフを増員して万全のサポートを提供してくれている。

参加するのはダウン症や自閉症の子どもたちとその家族。保護者同士のネットワークを通じて集まる他、地元・茅ヶ崎市内の放課後デイサービスでの告知を見て申し込む家族もある。今年は障がいのある子ども10人とその家族合わせて30人が参加した。
教室当日の午前10時、香川会長から参加者に「イルカのいるいけすの上はすごく暑いので十分に気を付けて」と注意があり、教室が始まった。施設スタッフからイルカの顔ではなく体に触ることなどの説明を受けた後、ウェットスーツに着替え、ライフベストを着けて、イルカの待ついけすへ向かう。
いけすでは、いかだの上から手を伸ばしてイルカの体にタッチしたり、餌をやったり、頰にキスしてもらったりして触れ合い、続いてはいよいよスイム体験。通常はマスクとシュノーケル、足ひれを着けて入るが、嫌がる子も多い。その場合は、スタッフが抱きかかえて水面に顔を出したままで泳げるようにする。恐るおそる水に入った子どもたちだったが、すぐに楽しそうな歓声が上がった。

15年前、海に関係する活動を模索していたクラブは、伊東市の施設が障がいのある子どもも受け入れていることを知り、体験教室を企画した。当初は1泊2日で開催し、1日目に触れ合い体験と交流会、2日目にスイム体験としていたが、コロナ禍中の休止から再開するのを機に、2日間の内容を1日に集約した。
「障がいのあるお子さんを持つご家族は、外出の機会が限られたり、外出先で周囲に気兼ねしたりすることが多いと聞きます。この教室では、障害のある子と兄弟、保護者の皆さんに、思い切り楽しんでほしいのです」
この事業を担当する楡井宏志委員長はこう話す。
クラブでは家族そろってレクリエーションを楽しむ機会をつくると共に、障がいのある子どもへのアニマルセラピー(動物介在療法)として、この活動を実施している。高い知能を持つとされるイルカによるセラピーの研究は、50年前にアメリカで始まった。発達障害の子どもたちに対しては、チャレンジする意欲を起こし、達成感を持たせることで成長を促す効果があると考えられている。

参加者の中には、最初から進んで積極的に活動に参加する子もいれば、なかなか馴染めない子もいる。教室が始まってまもなく、ウェットスーツを着るのを嫌がって泣き出した男児がいた。大人2人でなだめながら何とか着せていけすまで行ったものの、座り込んだままイルカに近付こうとしない。そのまま終わると思いきや、イルカと泳ぐ仲間たちの姿を見ているうちに、一言「やる」とつぶやいた。
スタッフにしがみつくようにして海に入ったその子は、イルカの背びれをつかんでスイーっと海面を進むと、それまでとは一転、とびきりの笑顔を見せた。

「子どもたち、そして保護者の方々がとてもいい笑顔を見せてくれるのが、僕たちにとって一番のごちそうですから、それが頂けると毎回やって良かったなと思います」
そう話す香川会長は、ギラつく太陽の光が照りつけるいかだの上に立ち、子どもたちの笑顔を写真に撮り続けていた。
体験が終わった後は交流会。みんなで昼食のバーベキューを楽しみ、笑顔いっぱいの体験教室は終了した。
2025.08更新(取材・撮影/河村智子)
クラブ情報:茅ヶ崎オーシャン ライオンズクラブ
【会員数】28人
【結成日】2006年7月30日
【スポンサークラブ】330-B地区8リジョン2ゾーン全クラブ
【クラブの特色】19年前、若手中心のクラブとして誕生。家庭や仕事を大切にしながら継続出来る活動を目指しつつ、新しい発想で奉仕に取り組んできた。クラブ名の「オーシャン」は結成当時のメンバーの投票で決定。地元茅ヶ崎の象徴・えぼし岩とイルカを配したシンボルマークも、メンバーによるコンペで決まったもの。青少年育成に力を入れ、2025-26年度はビーチサッカー大会を計画中。今年5月には、町おこしに関心を持つ大学生によるクラブ支部、湘南学生支部を発足させた。
【例会日時】第1・3火曜日19:30〜
【例会場】茅ヶ崎市勤労市民会館