取材リポート
眼鏡リサイクルで
開発途上国と地域に貢献
332-C地区(宮城県)
#人道支援
#視力保護

使われなくなった眼鏡を再生し、開発途上国へ届ける眼鏡リサイクル。332-C地区が運営する眼鏡リサイクルセンターでは、海の向こうで眼鏡を必要とする人たちへの支援と、地域の障がい者の就労支援を結び付け、それぞれ大きな貢献を果たしている。
視力保護はライオンズクラブ国際協会が創設当初から現在まで、100年以上にわたり力を注いできた重点分野だ。目の不自由な人々の生活を改善し、回避可能な失明を防ぐため、世界中のライオンズがさまざまな活動を展開している。その中で広く取り組まれている活動の一つが、ライオンズ眼鏡リサイクル・プログラム。国際協会公認のライオンズ眼鏡リサイクルセンターは、アメリカ国内の13カ所の他、オーストラリア、カナダ、フランス、イタリア、ニュージーランド、南アフリカ、スペインの7カ国にあり、中古眼鏡をリサイクルして発展途上国などへ届けている。しかし日本国内にはリサイクルの仕組みがなく、収集した中古眼鏡を海外のセンターへ送るしかなかった。
そうした中、332-C地区(斎藤孝一地区ガバナー)は2017年に日本のライオンズクラブで初めてとなる眼鏡リサイクルセンターを設立。国際協会の公認は施設面の条件が合わず受けていないが、全国のライオンズクラブから寄せられた中古眼鏡をリサイクルし、これまでに約10万本を東南アジアやアフリカなどの開発途上国に届けてきた。

332-C地区眼鏡リサイクルセンターが活動の拠点を置くのは、仙台市青葉区にある就労継続支援B型事業所チャレンジビラ二日町だ。ここでは20代から70代までの障がいのある利用者約20人が、眼鏡リサイクルの作業に従事している。
各地のライオンズクラブが収集した中古眼鏡は仙台市内にある332-C地区の事務局に届き、そこでセンターの運営を担う眼鏡リサイクルセンター運営委員会(木川田明弘委員長/仙台高砂ライオンズクラブ)のメンバーが個数を確認して、チャレンジビラに運び入れる。リサイクルの作業は大まかに次のような流れで進む。台所用洗剤に眼鏡を漬けた後に食器洗浄機で洗浄。丁寧に拭き上げてから、レンズチェッカーと呼ばれる機器でレンズの度数を測定し、数値を記したシールを貼って1本ずつ袋詰めする。それを度数ごとに仕分けし、海外発送用に梱包(こんぽう)して、作業は完了となる。
取材時には、青森ライオンズクラブ、秋田ライオンズクラブ、鳥取千代ライオンズクラブが収集した中古眼鏡の再生作業が進められていた。眼鏡の提供は各地のライオンズクラブの他に、提携企業からも寄せられる。仙台市に本店を置くメガネの相沢が店舗内に置いたリサイクルボックスで中古眼鏡を集めている他、メーカーから型落ちした眼鏡が寄贈されることもある。

332-C地区はセンター設立前から中古眼鏡収集に取り組み、地区内のクラブが集めた眼鏡をカナダやオーストラリアにあるライオンズ眼鏡リサイクルセンターに送っていた。しかし、そこから先の支援に関する詳しい報告はなく、活動の成果を実感出来ずにいた。運営委員会の木川田委員長はセンター設立に至る経緯を次のように話す。
「海外のセンターではリサイクルした眼鏡を開発途上国へ送るわけですが、その時には『日本からの眼鏡』ではなくなるし、どこで、どのような人のために役立っているのか、私たちには分からないままでした。それならば、332-C地区でリサイクルセンターを立ち上げてはどうか、という話になりました。地区内には国際協力に携わる眼科医のメンバーがいますので、そのつながりから途上国にある眼科医の団体へ送り、その先生たちのボランティア活動として必要とする人たちに眼鏡を処方して配る、というのがいちばん理想的だと考えたんです」
こうして独自のリサイクルセンターを持ったことで、日本から送られた眼鏡が受益者の手に渡るところまで見届けることが出来、最後まで責任を持って活動することが可能になった。

332-C地区眼鏡リサイクルセンター運営委員会は、この事業に地域の障がい者支援の要素も組み込んだ。中古眼鏡のリサイクルに必要な作業を、地区内のメンバーが運営するチャレンジビラに委託し、レンズチェッカーなど作業に必要な備品を整備。これにより、障がいにより就職が困難な人たちに工賃が支払われるのに加え、社会貢献事業の一端を担う経験が自信につながるとの期待もある。
このシステムを維持するため、中古眼鏡の受け入れには1本当たり50円の寄付を求め、そのうち30円は眼鏡の洗浄・梱包の作業費、20円を海外への運送費に充てている。

チャレンジビラでサービス管理責任者を務める加藤幹子さんは、リサイクルセンターの仕事にはたくさんの工程があるので助かっていると話す。利用者によって出来る作業は異なるが、眼鏡リサイクルには箱の組み立てなどの簡単な作業もあれば、屈折度測定のようにコツの習得が必要な作業もあり、それぞれの特性やその日の体調などに合わせて作業を割り振ることで、全ての利用者が携わることが出来るという。
リサイクル作業できれいによみがえった眼鏡は、100本ずつ箱詰めされて支援先の国へ送られる。作業場の隅には、発送を待つライオンズ眼鏡リサイクルのロゴが入った段ボールが積まれていた。

開発途上国での眼鏡の配布は、眼科医の山口克宏さん(仙台エコー ライオンズクラブ)の尽力により、日本眼科国際医療協力会議に加盟する団体などを通じて行われている。これまでに寄贈した国は、カンボジア、ベトナム、モンゴル、タンザニア、モザンビーク、キリバスなど10カ国に上る。
カンボジアには昨年と今年、それぞれ3万5000本を、サムデック・テチョ青年ボランティア医師協会に寄贈した。この支援は、在仙台カンボジア王国名誉領事館の田井進名誉領事の協力で実現したもので、日本からカンボジアへの輸送も円滑に進めることが出来た。
眼鏡リサイクル運営委員会では、支援の成果を広く理解してもらえるよう、332-C地区眼鏡リサイクルセンターのウェブサイトに詳細な報告を掲載している。支援先の写真からは、日本でリサイクルされた眼鏡が確かに途上国の人たちの役に立っている様子がよく分かる。センターの活動内容や中古眼鏡の送付方法に関する情報は、ウェブサイトで確認を。
2025.09更新(取材・撮影/河村智子)
●関連情報(外部リンク)
332-C地区眼鏡リサイクルセンター https://eyeglassrecycling3.wixsite.com/332c