投稿リポート 初の奉仕活動は託児銭湯

初の奉仕活動は託児銭湯

2023年11月に誕生したばかりの兵庫みらいライオンズクラブ(藤之原輝虎会長/21人)は、平均年齢35歳の若手中心のクラブだ。若者ならではの発想と行動力で新しい風を吹かせて、ライオンズの中でも刺激になりたいと願っている。

そんなクラブの奉仕活動では、誰のために、何をすべきか、ふさわしい活動とは何かと、メンバー内で熱い議論が交わされた。スポットを当てたのが、「子育てママの孤立問題」だ。現代の子育て中の母親を取り巻く環境として、多忙な父親の育児参加不足、核家族化により祖父母の協力が得られない、地域交流の希薄化などが挙げられる。そんな中で子育てに追われるママは、自分の時間をほとんど持てず、心身を癒やせる時間がないという悩みを抱えている。これを改善せずして国難である少子化の解消は困難であろうことは、疑いようもない。

そこで、当クラブは近年再注目されている銭湯に目を向けた。銭湯には体を清潔に保つだけでなく、心を癒やし、地域住民との交流の場所となる役割がある。高度経済成長期以後、自宅に風呂があるのが当たり前になったが、数を減らしながらも銭湯が残ってきたのは、そうした場が必要とされているからだと思う。クラブメンバーの江頭麻里さんが、東京都中野区で実施されている「託児銭湯」という取り組みの発起人と交流があり、また兵庫県尼崎市にある天然温泉を使用した銭湯「蓬莱湯」の女将(おかみ)ともつながりがあったことから、「尼崎市でも託児銭湯を実施したい」という声が上がった。保育士らの元で子どもを預かり、ママには温泉でひと時の安らぎを得てもらう。そんな機会があれば、とても喜んでもらえるのではないかと考えた。メンバーの気持ちが、目標に向けて一つになった。

中野区の託児銭湯では、次の三つのサービスが軸となっている。
① パパとママが入浴中に託児スペースで子ども(未就学児~小学生)を預かる
② 子どもの入浴をスタッフが介助する
③ 大人の入浴料金以外の費用負担はなし(自治体・協賛企業から支援を得る)

兵庫みらいライオンズクラブが初めての活動として全くの未経験からスタートするには、今の自分たちに出来ること、出来ないことを見極め、出来ることを最大限にやろうとなり、下記のように決めた。
① 銭湯の利用可能なスペースや託児スタッフの人数を考慮し、対象をママと未就学児に絞る
② 入浴介助は困難な点が多いため見送る。託児銭湯の開催時間は、子どもの入浴が不要な朝風呂の時間帯とする
③ 参加者の費用負担は入浴料金のみ。子どもの入浴介助が行えない分、ママへのサービス拡充に力を入れ、無料スイーツバイキングと整体師のマッサー
ジを用意する

サービスにかかる費用は当クラブの事業予算から捻出し、実績を積んだ後には市の助成や協賛企業も募りたいと考えている。

今回、特に苦労したのは事業資金不足だ。少ない費用でより良いサービスを提供するために、創意工夫が求められた。スイーツバイキングではおいしい菓子を食べてもらいたいと、メンバーが集めた情報を元に、尼崎市内にある和菓子メーカーのアウトレット、三田市のチョコレート工場の製造直販、大阪府豊中市の機内食用ケーキの切り落とし販売店などに足を運び、安価でおいしいスイーツを用意した。テーブルの飾り付けにもこだわり、100円ショップの資材を活用し、可愛く見栄えがするように工夫した。蓬莱湯の女将は営業時間外の銭湯を入浴料のみで貸し切りにしてくれただけでなく、銭湯に近い自宅まで託児スペースとして開放し、保育士も紹介してくれた。また、メンバーの友人の整体師と、看護師であるメンバーの家族も無償で協力してくれた。尼崎市の紙芝居ボランティアにも協力を得た。事業のPRに当たっては、クラブメンバーが地元のラジオネットワーク「兵庫エフエム放送(Kiss FMKOBE)」のポータルサイトに掲載を働きかけ、中野区託児銭湯の発起人もSNSで拡散してくれた。発表当初こそ出足は鈍かったものの、想定より早く予約人数に達したため受け付けを早期に終了した。

4月7日、イベント当日。前日に出ていた雨予報は外れ、好天に恵まれた。暖かく桜も満開というすばらしい春の日だ。朝8時30分、蓬莱湯にクラブメンバーが集合。それぞれの持ち場で、初めての奉仕活動の準備を整えた。10時、予約のママと子どもたちが次々と来場。中には遠く姫路市から来てくれた親子もいた。託児スペースではたくさんのおもちゃを見て喜々として入ってくる子もいれば、ママと離れるのが心配で泣いてしまう子も。そんな子どもたちに後ろ髪を引かれながらも、銭湯に向かうママたちの姿があった。11時、スイーツバイキングではお菓子を片手に、同世代の子を持つママ同士が久々の解放感に喜びの声を上げていた。
「こんなにゆっくりお風呂に入って、お菓子を食べられるなんて久しぶり!」
「普段は髪もちゃんと乾かせないし、お菓子は子どもに隠れて食べなきゃだめだから」

託児スペースでも、さっき初めて会った子同士がもう仲良く遊び、元気な声が響きわたった。
「紙芝居を自分で読ませてもらえて楽しかった!」
「ママが迎えに来てくれたけど、まだ帰りたくない!」

午後12時。「またやってくださいね!」「絶対にまた来ます!」「また遊ぼうねー」と、笑顔で帰っていくママと子どもたち。たくさんの感謝の言葉と笑顔をもらい、我々メンバーも胸が熱くなった。

今回大人20人、子ども28人が参加してくれ、来場者アンケートでは9割以上から「満足」という回答をもらった。この活動は1回だけでなく、継続的なものにしていかなければならない。ライオンズの力で、尼崎だけでなく全国に広げていきたい。子育てしやすい未来を創るために、まず我々がきっかけになりたい。この活動に興味を持ったライオンズクラブの皆さんには、ぜひ一緒に託児銭湯の輪を広げてほしい。ご連絡をお待ちしています。

2024.04更新(吉崎将)

●編集長コメント
兵庫みらいライオンズクラブは、浜原正豊前335-A地区ガバナーの「現会員の2世を中心とした新クラブを作りたい」という熱い思いの下に結成されたクラブです。また投稿者の吉崎将さんと、その奥さんで今回の託児銭湯事業の中心となった吉崎香菜さんは元レオクラブメンバー。共にレオクラブで奉仕活動に取り組んだ2人が結婚し、そして一緒にライオンズメンバーになりました。現在は2人の子どもの子育て中で、クラブ例会には子連れで参加しています。平均年齢35歳の同クラブには、他にも元レオや子育て真っただ中の会員も少なくありません。今回の託児銭湯ではメンバーの子どもたちも参加して託児スペースで幼児たちと遊んでくれたので、大人だけで子守りをするよりも子ども同士の方が早く打ち解け、スムーズに託児が出来たそうです。新しい発想と若い力が結集した兵庫みらいライオンズクラブが、新しい時代のライオニズムの先駆者になることを期待しています。
編集長・335複合地区委員/団英男(兵庫県・神戸みなとライオンズクラブ)