投稿リポート ヒカリズム2023
~医と禅と芸術の融合~

ヒカリズム2023~医と禅と芸術の融合~

9月9日、医療法人光ヶ丘病院主催、高岡ライオンズクラブ(辻井利男会長/89人)協賛による「ヒカリズム2023~医と禅と芸術の融合~」が、高岡市にある国宝・瑞龍寺を会場に開催された。光ヶ丘病院では音楽療法や臨床美術(アートセラピー)などの芸術療法を取り入れている。ヒカリズムはこれらの芸術療法を広く地域住民に知ってもらうことを目的としており、研究や臨床の分野から最先端の情報を伝える他、医と高岡の伝統工芸・高岡銅器のコラボ事業として、医療や予防、介護における高岡銅器の新たな活用にも挑戦している。このイベントの趣旨が、当クラブが新規事業として考えていた「SDGs─持続可能な社会・文化・環境を次世代に引き継ぐ」の理念と一致したため、共同事業として取り組むことにした。また、会場となった瑞龍寺は知っているが中に入ったことはないという市民が意外に多く、この機会に訪れてその魅力を知ってもらい、更に県外からも観光を兼ねて多くの人に参加してもらおうと考えた。

ヒカリズム2023は、3部構成となっている。第1部は「医と禅と芸術の分野から、音楽・アートの新しい可能性を探る」と題したトークセッション。光ヶ丘病院リハビリテーション科の新藤悠子部長が同院で行われている音楽療法を紹介した他、慶應義塾大学環境情報学部の藤井進也准教授が音楽やリズムが脳や心身に与える影響や、音楽神経科学の最新の研究知見、音楽やリズムを活用した脳・神経リハビリテーションの事例研究について話をした。音楽神経科学という分野は大変興味深いものだった。更に西方病院神経内科の岩波久威部長は、音楽療法はその臨床結果から認知症の非薬物療法として認められており、楽器演奏が認知機能に良い影響を及ぼすことなどを話した。認知症になると音の感じ方が弱くなるそうで、歌うこと、演奏することは認知症予防に効果があるという。何よりも「音楽で感動する」ことが良いのだそうだ。アルツハイマー型認知症の発症には人生後半でどのような活動に取り組んでいたかが大きく影響し、脳の認知能力を刺激する活動を多く行うことは、発症年齢を遅らせる可能性があるとのこと。新しい楽器に挑戦したり、アートを制作したりすることで、発症に5年の差が出ることが分かった。また瑞龍寺の四津谷道宏住職は、精神統一に必要なのは呼吸であり、心身の調和にはリズムの刻み方が大切だと話された。

第2部の芸術鑑賞では、おりんと創作舞踊による「瑞龍のこだま~いにしえと未来を繋ぐ音」が演じられた。作品のモチーフは、瑞龍寺の仏殿の天蓋に描かれている天女。作詞作曲は、光ヶ丘病院で音楽療法を担当している松井千代子先生だ。演奏の要になるのが「久乗おりん」で、高岡の老舗仏具メーカー㈱山口久乗が、おりんの音を仏具としてだけでなくもっと身近に感じてほしいと制作したもの。その繊細な音色には一点の曇りもなく、それぞれの音が倍音となって響き合い調和する。久乗おりんの演奏は、リハビリテーション科の新藤部長が担当した。音楽療法でバイオリン演奏をされているだけあって、初めてのおりん演奏も力強く心のこもったものだった。声楽家の納村真紀子先生が加賀前田家二代当主・前田利長の思いを歌い、フラメンコの踊り手として、また日本舞踊の名取としても活躍されている前橋温泉クリニックの岩波佳江子院長が、歌に合わせてあでやかな天女の舞を披露した。

ヒカリズムに先駆けて行われた仏殿での奉納演奏

第3部のリズムワークショップでは、通常はアフリカの打楽器ジャンベなどで行うセッションを、高岡銅器のおりんや鐘、銅羅(どら)、風鈴やハンドベルなども使い、ガイド役の松井先生の体や手の動きに合わせて体験した。高岡銅器は、前田利長が高岡城を築いた際に7人の鋳物(いもの)師を招き、土地を与えて鋳物づくりをさせたことに始まる。瑞龍寺の回廊では臨床美術展も開かれ、その取り組みを知ってもらうことが出来た。

当クラブは一般客への告知、当日の設営や受け付け、機材の運搬などを担当した。おかげさまで170人を超える大勢の人々が来場し、大成功のうちに終了した。まさに辻井会長のスローガン「信頼と友情と調和」の通り、心強い仲間に支えられて成し遂げられたことを心から感謝している。
 
2023.11更新(福祉委員長/滝田実千代)