獅子吼 医と食と農のモデルを
世界に発信したい

医と食と農のモデルを世界に発信したい

私は今、富山県高岡市にある光ヶ丘病院で「ひかりプロジェクト」のコーディネートをしています。旧来の病院のイメージは、古い、暗い、老人ばかり、というものでした。ひかりプロジェクトはそんなイメージを一新し、病院が「病気の人だけのための場所」から、患者さんも、その家族も、職員も、地域の人も、居心地良く過ごせて一人ひとりが輝ける、地域に開かれた場所となることを目指して立ち上げられました。私はプロジェクトリーダーであるリハビリテーション科部長の新藤悠子医師をサポートしながら、プロジェクトを形にしています。

新藤医師は病院を「みんなが自分らしく輝ける場所」にするため、子どもから高齢者までみんながつながれる「病院発・みんなの畑」の設置を提案。監修を企業系農園ディレクターで、拓殖大学北海道短期大学の招聘(しょうへい)教授として地域創生を担当されている飯尾裕光氏に依頼しました。

「リハビリファーム」と名付けられたこの畑は、「レイズドベッド農法」いう方法を採用しています。地面の上に木材で枠を作り、土を高く盛って野菜や植物を栽培するので、車いすや杖の使用者、ひざや腰に痛みがある人など、さまざまな身体条件の人でも作業することが出来ます。また、「ノ―ディグ農法」も取り入れています。これは畑を耕さずに作物を栽培する方法で、病院で出た段ボールを敷いた上に土を乗せる環境再生型農業です。耕さないので労力は少なく、廃材の段ボールを再利用出来るので環境にも優しい農法です。野菜作りは自然栽培で行っており、農薬も化学肥料も使わないので安心です。微生物による分解が活発に行われるように、空気、水、栄養を与えながら最適な環境で作られた土を使用しており、触るとフカフカで手で穴が掘れるほど軟らかく、子どもや高齢者でも扱いやすいものです。

私にはずっと「病気を治す手段で悩むより、病気にならない生き方を伝えたい」という思いがあり、アンチエイジングや認知症予防などについて医療や企業をサポートする会社を立ち上げました。自分の健康を作ることは、一番大事なことです。認知症にならない生活を送るには、毎日の暮らしの中で新鮮で安全な食や農に接する機会を持つことが大切です。光ヶ丘病院のリハビリファームは、私が長年抱き続けた理想の形でもあります。

太陽を浴びながら体を動かし土に触れていると、体も心も元気になります。畑作りにはたくさんの発見や喜び、感動があり、それが生きがいになっていきます。小川のせせらぎ、鳥のさえずり、木々の香り、樹木や土の感触などを五感で感じることで、強いストレスを感じている状態から人間本来の穏やかな状態に戻り、リラックスして免疫力が高まります。育てた野菜で何を作ろう、どうやって食べたらおいしいかな?と考えるのも脳の活性化につながります。そして無農薬で安心安全な方法で栽培された野菜やハーブを使うことで、腸内環境が良好になっていきます。認知症予防の観点でも、自然の恵みから得られる食材で栄養改善が進み、また作業を通じて体や五感をフルに使うことで体にも脳にも複雑な刺激を及ぼす、大変好ましいものです。

リハビリファームでは毎月ワークショップを開催しており、地域住民や子どもたちも参加します。たき火での焼き芋やパン作り体験、またテントサウナ体験など、毎回大人気です。いくつになっても学び、楽しむことは大切ですね。リハビリファームを拠点に「医と食と農のモデル」を作り、光ヶ丘モデルを世界に向けて発信していきたいと思っています。
(福祉委員会委員/2021年入会/59歳)

2023.01更新