投稿リポート ハンセン病について理解し
偏見・差別のない社会を

ハンセン病について理解し偏見・差別のない社会を

大垣ライオンズクラブ(62人)は市民社会福祉委員会の新しい事業として、「ハンセン病を再認識する勉強の時間」と「プロ演奏家の生演奏を楽しむ時間」を盛り込んだ音楽会を、9月1日に大垣市内のホテルで開催した。催しのタイトルは、東京都東村山市国立療養所「多磨全生園」人権の森構想支援チャリティー「遠藤征志・梓澤たまき ピアノ&ヴァイオリン演奏会」とした。

数年前、今回出演していただいたミュージシャンお二人による慰問コンサートが、国立療養所「沖縄愛楽園」で開催されると知り、「国立療養所とはどんなところなんだろう?」と、家内と共に足を運んだ。園内にある資料館の見学、関係者からのお話、そしてハンセン病回復者の皆様とのすばらしい演奏会に大いに感動し、その体験が大垣でのイベント開催の引き金になった。ハンセン病そのものや国の強制隔離政策による人権侵害などの問題に関心を寄せ、広く多くの皆様にこの病気に関する正しい知識を持ち、真実を知っていただきたいという願いで今回のイベントを企画、開催した。

開催前にミュージシャンと共に多磨全生園を訪問した際には、鵜飼園長や自治会の皆様にお会いした。また、法務省人権擁護委員の江藤様の計らいにより、回復者の代表的存在で人権回復運動などに広く活躍された、恩年98歳の平沢保治様にもお会いし、音楽会の来場者に向けた熱い思い、願いのこもったビデオメッセージをいただくことができた。

音楽会当日、会場は満員となり、前半の食事会に続いてハンセン病に関するビデオを上映し、真剣なまなざしでご覧いただいた。後半は来賓あいさつの後、ピアノとバイオリンによるすばらしい演奏が始まり、ハンセン病に関するトークショー、そしてクライマックスとなるビデオメッセージが放映されると、来場者は固唾(かたず)を飲んで聞き入っていた。

更に、ハンセン病を物語の背景として大きな話題を呼んだ名作映画「砂の器」の挿入曲「宿命」の演奏が始まると、作品中でハンセン病で村を追われた父と子の壮絶な遍路旅が頭をよぎったのか、来場者の目には感動の涙が浮かんでいた。

全国13カ所の国立療養所には約900人の方々が入所している。故郷に足を運びたいと思いながら、偏見や差別を恐れていまだ帰れない回復者の方が大勢おられる。平均年齢は88歳。入所者の高齢化によりハンセン病問題は忘れられつつある。その差別の歴史を風化させないためにも、機会があれば各地にあるハンセン病療養所を訪れ、自分の目で見て、心で感じてほしいと願うばかりである。

かつて不治の病と恐れられたハンセン病は、有効な治療法の開発により治癒することが可能となった。しかし入所者の方々は過酷な差別と国の強制隔離政策による筆舌に尽くし難い苦痛を受けてきた。何世紀にもわたり背負わされた偏見や差別は、社会不正義の一つだ。ハンセン病の人権問題を解消することが、全ての人間が基本的人権を享受し、尊厳を持って生きられる社会の実現につながるのではないだろうか。

今回のイベントに賛同し、寄せられた温かい支援金は「国立ハンセン病記念公園人権の森構想対策委員会」に寄付させていただいた。イベントの趣旨が全国のライオンズクラブに波及して「ハンセン病問題と向き合う会」や最寄りの国立療養所支援のチャリティーイベント等が各地で開催されることを願っている。

偏見・差別のない社会の実現に向けてWe Serve!

2025.09更新(会長/大橋則雄)

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