取材リポート かるた大会で楽しみながら
ごみ減量を推進

かるた大会で楽しみながらごみ減量を推進

かるたを使って、ごみ減量の大切さを理解してもらおうというユニークな取り組みが行われている。
「ごみじゃない しげんというなの たからもの」
「ほうそうし なくてもきもち つたわるね」
「もったいない そのひとことが ごみへらす」
ごみの減量化やリサイクルを題材にした標語を五十音分そろえた「ごみ減量すすむくん・かなえちゃんかるた」を作成したのは、山形中央ライオンズクラブ(渡邊美智子会長/37人)だ。

市民団体の「ごみ減量・もったいないねット山形」と協力して、2009年度に同団体のキャラクターのイラストを使ったかるたを作成し、山形市内の幼児教育施設や学童保育所へ配布。また、これを使ったかるた大会を開催してきた。冬休み中に親子でかるたに書かれている標語を覚えてもらい、2月に開催される大会でその成果を発揮してもらうという取り組み。遊びを通して、子どもから大人まで広く市民にごみ減量化やリサイクルに対する認識を深める機会を提供するのがねらいだ。

2月17日、コロナ禍による中断を経て4年ぶりの開催となった「ごみ減量すすむくん・かなえちゃんかるた大会」は、今回で12回目を数える。会場となった山形市総合スポーツセンター武道場には10チームが集まり、白熱した札の取り合いを繰り広げた。

山形市は、全国一ごみの少ない県を目指す「ごみゼロやまがた県民運動」に参加し、ごみの減量化に取り組んできた。2006年12月には市民、事業者、行政が協力してごみの減量とリサイクルを広める市民団体「ごみ減量・もったいないねット山形」が発足し、組織の枠組みを超えた柔軟な活動を多岐にわたって企画・実施するようになった。今でこそマイバッグ持参で買い物をする光景は珍しくないが、全国でもいち早くマイバッグ持参が定着したのが山形市。ごみ減量化の先進都市として知られ、全国の自治体から視察が訪れる。

ごみ減量とリサイクルをテーマにしたかるたが生まれたのは15年前、ごみ減量・もったいないねット山形がごみ減量の標語を募集したのがきっかけだった。良い作品が数多く集まり、「これらの標語を使ってかるたを作ったら、子どもへの啓発に役立つのではないか」という話になった。改めて確認してみると、まるでかるたを作るために集めたかのような標語ばかりだった。ごみ減量・もったいないねット山形には600近い加盟団体があり、山形中央ライオンズクラブもその一つ。そこで同クラブが結成40周年記念事業としてかるたを製作し、それを使ったかるた大会を開催することとなった。

最初に製作した1700セットのかるたは、ごみ減量・もったいないねット山形へ寄贈され、2009年11月に保育園や幼稚園、 学童クラブ、放課後児童クラブなどへ配布。翌2010年2月には、第1回のかるた大会が開催された。幼稚園、小学校低学年、同高学年、一般の部に分かれて競われた大会は大いに盛り上がり、山形中央ライオンズクラブの40周年記念事業は大成功を収めた。

このかるた大会は、幅広い年代に対してごみ減量やリサイクル推進に大きく貢献したとして山形市から高く評価され、クラブは継続事業として取り組むことを決定。2012年には1200セットのかるたを追加製作した。

大会の参加条件は、1チームにつきアルミ製の空き缶10個を持参すること。ごみ減量とCO2削減を目的としたかるた大会という趣旨に合う上、換金して奉仕に役立てることも出来る。集まったアルミ缶は大会実施中に引き取り業者の元へ運び、閉会式で換金額が発表される。この日集まったアルミ缶は28.3kgで1680円。また、CO2削減量に換算すると216.3kg分となった。換金で得た収益は、会場の募金箱への寄付と合わせて、能登半島地震の災害義援金とした。

大会で目立ったのは、札を取る子どもたちの反応の良さだ。大人顔負けの素早い動きで次々と札を取っていく。コツを聞くと、標語ではなく「絵で覚えている」とのこと。それでは、せっかくの標語を覚えてもらえないので、読み手を務めるライオンズクラブやごみ減量・もったいないねット山形のメンバーは、札が取られた後も最後まで標語を読み切るようにしている。本来の目的は、ごみ減量やリサイクルのアイデア、気付きが自然に浸透していくことなのだが、とにかく興味を持って大会に参加してくれるだけでも十分に目的を果たしていると、クラブは捉えている。

参加チームから集めた空き缶はすぐに引き取り業者に持ち込んで換金し、閉会式で結果を発表する

ほほ笑ましいシーンも見られた。惜しくも早い段階で敗退してしまったチームの子どもたちが、空いたテーブルを使ってかるたで遊び始めた。最初は大人が読み札を読み、子ども同士で札を取り合っていたが、途中で子どもが「自分も読み札を読みたい」と言いだした。機会があれば読む役をしてみたかったとのことで、そんな子は他にもいるようだ。そうした様子を目にしたクラブメンバーからは、競技とは別に、子どもが読み手になる時間帯を設けても面白いのでは、というアイデアが出されていた。

決勝戦は例年通り、紙ではなく布製の絵札を使って行われた。ごみ減量・もったいないねット山形に加盟する他団体が手作りし、提供してくれたもので、紙製よりもサイズが大きく札面がよく見える。そのため、読み手が札を読み始めるやいなや両チームから勢いよく札に手が伸び、決勝戦はあっという間に終了した。

今回は4年ぶりの開催とあって、記録と記憶を頼りに苦労しながら何とか運営にこぎ着けた大会。クラブでは次年度以降もこのかるた大会を継続し、山形市が進めるごみの減量化に貢献していく。

2024.04更新(取材・動画/砂山幹博 写真/田中勝明)