獅子吼
声かけの大切さ
ヴォイス・コール同好会
菊地美知子(秋田県・大曲テンダーLC)
大曲テンダー ライオンズクラブには「ヴォイス・コール同好会」という会がある。日本に2800もあるライオンズクラブの大きな組織の中の、小さな同好会だ。会員は当クラブの有志5人(女性)、ブラザークラブから2人(男性)、一般市民2人(女性)の計9人(2023年12月現在)。活動は通常月1回、2時間半で、同好会の方向性、情報交換、作業分担などを話し合い、その結果をLINEグループで共有しコミュニケーションを図っている。
同好会を立ち上げるきっかけとなったのは、友人同士の「ボランティア活動を考える同好会があってもいいのでは?」といった雑談だった。約1年間の準備期間は、暗中模索の中でブラザークラブの人脈をたどり、関連のありそうな情報を収集し、講習会に参加し、本を読みあさって、何とか同好会の趣旨と名称を決めるところまで行き着いた。暮らしの中で困っている時に互いに声をかけ合うというごく当たり前のことが、バリアフリーにつながるかもしれない。多様な人々が社会参加する上でのバリアー(障壁)をなくすには、まず思いやる心のバリアフリーを広げたい。そのように考え、活動の軸を「声かけ」とし、「ヴォイス・コール同好会」と命名。会員は大曲テンダー ライオンズクラブの会員に限定せず、年齢、性別の枠もなく、趣旨に賛同した仲間が集い、2019年に同好会として動き出した。
初めての活動は2019年10月。ライオンズクラブ国際協会のグローバル重点分野を念頭に置き、視覚障がい者支援を考える会を大仙市で開催した。この会では、秋田県立視覚支援学校の講師2人に協力していただいた。視覚障がい者の実情についての講演後、その心情を想像しながらのサポート方法や「声かけ」などの体験学習をすることが出来た。参加者は当クラブ及びブラザークラブのメンバーと地域住民の計25人。微力ながら障がい者や高齢者、子どもたちを地域で支えていくために、積極的な声かけの必要性を提案出来たと思う。しかしこの活動には、医療に関する知識、福祉関連の知識など多くの専門知識が不可欠であり、各方面から支援を得ながらの継続には限界があった。
この経験を踏まえ、同好会メンバーの高齢化も考慮に入れると、自力で出来る活動を再検討する必要があった。熟考の末、小児がん支援の一貫として、がん治療の副作用で脱毛に悩む人のための帽子を製作する案が浮上した。各自が出来る作業を分担することで継続的な活動が可能であり、2020年5月からこれに取り組んでいる。製作に当たっては、がん体験者の会を招いての講習会で当事者の声を聞き、工夫を重ね、本同好会独自の帽子を完成させた。
折しも2022年6月、332-F地区(秋田県)のFWT(家族及び女性チーム)が小児がん支援活動として、秋田大学医学部付属病院小児科へ寄付金を贈呈した。その際、本同好会が手作りしたがん治療者用の布製キャップ100枚も併せて寄付をした。「使っていただけますか」の声かけが具現化したこの帽子には、ヴォイス・コール同好会のマークを付け、カードに「元気にな~れ!」の言葉と、サイズ、素材、連絡先を記載、心を込めて一つ一つ包装し届けることが出来た。使ってくださった顔も分からない方からのお礼の電話の「逆声かけ」に、メンバーはほっこりした気持ちにさせていただいている。
今日の複雑な社会環境において、ささやかな声かけさえも簡単ではない状況にある。しかし、私たちは同好会活動を継続する中で、声かけの意識を持ち続けることが自らの心を深めていくものだと、常に思い起こして進みたいと思っている。
(ヴォイス・コール同好会代表/12年入会/73歳)
2024.01更新