投稿リポート 幼少時から防災意識を
防災紙芝居を幼稚園に贈呈

幼少時から防災意識を 防災紙芝居を幼稚園に贈呈

福島中央(佐藤久芳会長/84人)、福島東(安部光善会長/24人)、福島あづま(武田博司会長/24人)各ライオンズクラブは合同で、防災紙芝居『おさとうやま』を福島市内30の幼稚園に贈呈した。

2011年3月11日、東日本大震災が発生した際、宮城県東松島市野蒜(のびる)地区では野蒜海岸から700mほど内陸にある高さ30m程度の小さな山に70余人の住民が避難。何度も押し寄せる津波から逃れ、肩を寄せ合って一夜を明かして九死に一生を得た。この山の所有者は、佐藤善文さん。佐藤さんは20代でチリ地震津波を経験、石巻市などの被害状況を目の当たりにした。その後は幸い大きな災害に遭遇せずにきたが、避難場所確保の重要性を忘れることはなく、1999年に野蒜地区に土地を購入して移住。有事に備え私設避難所の整備に着手した。野蒜地区は明治以降大きな津波には襲われたことがなかったため「ここに避難所はいらない」という声もあったが、佐藤さんは「相手は自然。備えが必要だ」と作業を続け、山頂に手作りした東屋と小屋には石油ストーブを備え、四方から避難出来るように山道も整備した。

着手から12年後に多くの人の命を救ったこの山は、震災以降、「おさとうやま」と呼ばれるようになった。被災地支援に尽力した兵庫県・明石魚住ライオンズクラブのメンバーである藤枝雅博さんは、この話を聞いて大いに感銘を受けた。イラストレーターのみたらしさんと一緒に、世界中にこの話を広めて津波被害を軽減したいと、2015年に絵本『おさとうやま』を製作。各国語(英語、インドネシア語、ロシア語、ウクライナ語、ベトナム語等)の翻訳も行った。同年、『おさとうやま』の紙芝居も作られた。これらは子どもたちがリアルな津波の恐怖におびえないように可愛い絵柄で昔話風にアレンジが施され、子どもにも分かりやすい作りになっている。

福島中央、福島東、福島あづまの3クラブは幼少期から防災意識を育むことが重要だと考え、この紙芝居を教材として市内の幼稚園に贈呈することにした。4月28日、私立幼稚園16園に全園の代表が集まる会合で贈呈。市立幼稚園13園分は11月5日に齋藤房一副市長にまとめてお渡しし、教育委員会を通じて配布してもらった。国立幼稚園1園には11月6日に直接持参した。

11月5日にふくしま中央認定こども園で行われた紙芝居の読み聞かせでは、先生が「ライオンズの皆さんからすばらしい紙芝居を頂きました。とっても大切なお話なのでよく聞いてくださいね。本屋さんには売っていない、教室にしかない紙芝居です」と紹介してくれ、更に次のような対話が行われた。

先生「今、この時に地震が来たらどこに逃げますか?」
園児「机の下に隠れる!」
先生「そうだね、すばらしい答えだね。それでは海に居る時に大きな地震が来ました。さあ、どうしましょう?」
園児「逃げる!」
先生「正解。そのままそこに居てはダメなんだよね~」

それから紙芝居がスタートした。すばらしい導入に関心しきり。途中にも時々質問が投げられるので、園児たちは物語に引き込まれながらも自分のこととして想像力を働かせ、最後まで集中して聞いていた。

紙芝居を贈呈した各園でこのように活用されれば、未来の安全に大きく寄与すると思う。これからも多くの人の命を救った佐藤さんの思い、災害に備えることの大切さを、より広く長く伝えていきたい。

2023.12更新(福島あづまライオンズクラブ第1副会長/大石康弘)