投稿リポート 思いをつなぐ
ランドセルプロジェクト

思いをつなぐランドセルプロジェクト

私は今年度、磐田ライオンズクラブ(61人)の会長に就任するに当たり、「ランドセルプロジェクト」を会員に提案して了承を得た。この事業では、ランドセルを「集める」と「贈る」の二つのことを行う。その趣旨は、ランドセルを購入出来ない家庭への支援と同時に、提供者が6年間大切に使用したランドセルを他の人に使ってもらうことで、SDGs達成に向けた取り組みも含まれている。また、家族にランドセルを買ってもらうのを当たり前のように捉えている子どもが大多数だと思うが、そうではない環境にある子もいることを知ってもらいたい。そして恵まれている自分の幸せを分かち合う気持ちを持ってほしいと考えた。この活動を通じて、子どもたちに周囲を思いやる心が育つことを期待している。

ランドセルの収集では、浜松いわた信用金庫の行員家族と、私が理事長を務める龍の子幼稚園の卒園生にも協力してもらって50個余りを集めることが出来た。提供されたランドセルの中には、「私が大切にしていたランドセルです。大事に使ってね」とか、「このランドセルで元気に小学校に通ってね」など、多くのメッセージが入れられていた。筆箱や鉛筆、ノートといった文具や、手提げ袋などが入っているものもあった。ランドセルを提供するだけでなく、相手に対して思いを巡らせたことが分かり、とてもうれしく感じた。

ランドセルをどのように渡すかについては、磐田市の教育委員会や幼稚園・保育園・こども園を所管するこども部と話し合いを持った。こども部の部長からは「生活保護などの申請に来る時、誰かに見られないかと周囲の目を気にする人が多い。ランドセルプレゼント会はこども図書館が入っている市の複合施設『ひと・ほんの庭 にこっと』で実施すれば、もし誰かに会っても『図書館に来たらやっていたので寄ってみた』と言えるので来やすくなるのでは」といったアドバイスをもらった。手を差し伸べることばかり考えていたが、誰にもプライドがあり、触れられたくない部分があることも尊重しなければいけないと実感した。

告知方法としては、案内チラシ(磐田市内在住の漫画家・寺田浩晃さんが挿絵を描いてくださった)を市内の幼稚園、保育園、こども園で年長組の全員に配布し、交流センター(公民館)、図書館、公共施設、浜松いわた信用金庫などでは設置や掲示をしてもらった。また当市にはブラジル人が多く暮らしていることから、ポルトガル語のチラシも作成。「広報いわた」にも掲載された。磐田市、市教育委員会、浜松いわた信用金庫、静岡新聞社、静岡放送及び中日新聞東海本社の後援も得た。公的機関を始めとする後援があることで、信用され安心してもらえると考えたからだ。ランドセルプレゼント会を行うことがメディアで報道されると、「使ってください」と20個のランドセルが届き、計76個を用意出来た。

いよいよ10月29日、ランドセルプレゼント会を開催。最初の来場者は、外国から帰国予定の孫のために来てくれたおばあちゃんだ。ランドセルを写真に撮って孫に送り、どれが良いかを確認していた。「孫に渡すのが楽しみです」と持って帰った。来年5月にシンガポールへの転勤が決まっているという家族は、「子どもの小学校入学後たった1カ月しか使わないので、ランドセルを購入するか迷っていました。こうした会を開いていただいてありがたいです」と、家族みんなで喜んでくれた。最も印象に残ったのが、小学4~5年生くらいの外国人の女の子だ。好みのランドセルを見付けると、それを背負って鏡の前で何度もポーズをとり、「これをください!!」。「気に入るものがあって良かったね」と言うと、何度も何度も「ありがとう!」とお礼を言ってくれた。そして「ランドセルを袋に入れましょうか」と聞くと、「背負って帰りたいです」と笑顔で帰っていった。彼女の最高の笑顔が見られただけでも、実施して良かったと実感した。この日、50人が来場し、ランドセル21個を贈呈することが出来た。

市議会議長や教育長も会場を訪れ、「本当に良い企画を実施していただいて感謝します」と言ってくださった。ほんの数時間のうちにいろいろな家族に出会い、少しでも役に立てたことをうれしく思う。ランドセルプロジェクトをクラブで提案してから、チラシの作成、告知方法の検討など、メンバーたちが知恵を出し合ってくれた。またプレゼント会当日は、担当メンバーが来場者に対して懇切丁寧に対応してくれた。私自身にとって、ライオンズって本当にステキだな!!と再確認する貴重な経験となった。 来年は教育委員会とも連携を取って、小学校で6年生にもランドセルの提供を呼びかける用意をしている。今後はより多くの人を巻き込んで、このランドセルプロジェクトを継続していきたい。

漫画家・寺田浩晃さんのイラスト入りの案内チラシ

2023.11更新(会長/座光寺明)

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