投稿リポート 平和を願う
カイタピースコンサート

平和を願うカイタピースコンサート

広島あさひライオンズクラブ(寺岡明美会長/35人)は広島に原爆が投下されて78年目の慰霊の日となる今年8月6日、広島県安芸郡海田町にある織田幹雄スクエアホールで、「2023カイタピースコンサート~しずかのしらべ~」を開催した。

1928年アムステルダム五輪の三段跳びで日本人初の金メダリストとなった海田町出身の織田幹雄を記念して建てられたこのホールには、1台のグランドピアノがある。これは海田町で長年音楽教師として勤められた沼静香さん(88歳)が、愛用の品を寄贈したものだ。沼さんは9歳の時に北朝鮮で終戦を迎え、家族と離ればなれになりながらもやっとの思いで日本へ引き上げてきた。しかしそこで目にしたのは、一面の焼け野原となった広島だったそうだ。音楽教師となった沼さんは、その苦しい体験や平和の大切さを子どもたちに伝え続けてきた。そして近年は、共に働いてきたピアノを町のために生かしてほしいと思うようになった。

一方で、当クラブのメンバー田川房雄さんが代表を務める「海田の夢を語る会」では、以前から「織田幹雄スクエアホールにグランドピアノがあれば」という声をよく耳にしていた。だから沼さんの申し出は渡りに船だったのだが、長年使用されてきたピアノは傷みが激しかった。そこで田川さんは多額の修理費も顧みず、部品を交換するなどして修繕。新品同様になったピアノが、ホールに寄贈されたのである。

しかしせっかくきれいに生まれ変わったピアノは、それから1年もの間、日の目を見ることはなかった。飾りではなく大いに利用してほしいという沼さんの思いと、それを支えた田川さんの思いを生かすために、広島あさひライオンズクラブは平和を紡ぐ音楽会を開こうと考え、今回のコンサートを企画したのである。コンサートではこのピアノで、平和学習の一環として広島の子どもたちに広く歌われている「アオギリの歌」などが演奏された他、町内のピアノ教室に通う小学生や高校生による東日本大震災の復興支援ソング「花は咲く」や、町内のコーラスグループによる「ひろしま平和の歌」などが披露された。更に、福山平成大学教授で国内外で活躍されているピアニスト・伊藤憲孝さんが、「エリーゼのために」など3曲を演奏した。当初は定員200人の予定だったコンサートは、実際には250人以上の観客を動員して盛大かつ厳粛に行われ、大成功のうちに幕を閉じた。

今年5月に開かれたG7広島サミットでは急きょウクライナのゼレンスキー大統領が来日しメッセージを発したが、今もロシアによる侵攻は終わりが見えない。ロシアは核兵器の使用もちらつかせている。しかし二度と広島や長崎と同じような犠牲者を出してはいけない。広島あさひライオンズクラブでは平和のコンサートがクラブを象徴する奉仕活動になるように、来年以降も8月6日から終戦の日の15日の間に開催し、市民の皆さんと一緒に平和について考えていきたい。

2023.09更新(青少年育成委員会/児玉賢)