取材リポート 里山の風景に彩りを添える
みんなのこいのぼり

里山の風景に彩りを添えるみんなのこいのぼり

「こどもの日」の5月5日は、古来男児の健やかな成長を祝う端午の節句でもある。あちらこちらの屋根の上をこいのぼりが泳ぐ姿は春の風物詩だったが、住宅事情の変化などから最近では随分と少なくなった。

柏崎ライオンズクラブ(片山一弘会長/51人)は、家庭で眠ったままになっているこいのぼりを市民から提供してもらい、緑豊かな公園の中に掲げて、元気に泳ぐ姿を見てもらいたいと考えた。かねて温めていたこの企画は、2016年に結成60周年の記念事業として実現。その後も継続されて、今年で7年目となった。

こいのぼりを掲揚する場所に選んだのは、柏崎・夢の森公園。森や水辺、原っぱなど里山の環境を復元し、循環の仕組みを学べる自然公園だ。豊かな環境の中でさまざまな体験が出来、市内の小中学生は遠足などで必ず訪れる。公園の保全活動は市民ボランティアに支えられており、柏崎ライオンズクラブも草刈りなどの環境整備に協力している。

事業の計画が固まり、クラブ・メンバーが「夢の森公園で一斉に掲げるため」と周囲に声をかけたり、地元新聞に掲載したりしてこいのぼりの提供を呼びかけると、多くの市民が賛同してくれて300匹近くが集まった。

こいのぼりが集まると、次は選別と補修の作業。真新しいもの、色落ちが激しいものなど状態はさまざまで、サイズも6m超えから2mほどの小さなものまでバラバラだった。それを長さ別にグループ分けし、約1カ月にわたる掲揚に耐え得るものか、破れている箇所やほつれがないかを確認。口金やひもはより耐久性の高いものに取り換えた。その次に行うのは、こいのぼりをつり下げるワイヤー張り。この作業には高所作業車が必要なので、クラブ・メンバーの専門業者に依頼して行い、地上10mの高さで約100mのワイヤーを通した。

こうして事前の準備を終え、いよいよこいのぼりの取り付け。ワイヤー張りの時と同じく高所作業車を使い、アームの先にあるバケットに乗り込んで作業を行う。こいのぼりとこいのぼりの間に長さ1mの筒を入れ、間隔を空けながら取り付けていく。初回は結成60周年の記念事業ということもあり、200匹ものこいのぼりを大空に泳がせた。撤去作業は約1カ月後だが、その間にも強風で外れたり絡まったりすることがあるので、その都度直す作業も必要だ。

今年は4月12日にこいのぼりの選別と資材確認、20日にワイヤー張りの準備をし、25日に取り付け作業を行った。今回はこいのぼり同士が絡まりにくくするため、間に入れる筒の長さを以前の1mから1.5mに変更した。用意したこいのぼりは56匹。間隔を広げて以前より数が減ったとはいえ、朝9時から始めた作業は午後2時過ぎまでかかった。昼の休憩時間には、気持ち良さそうに泳ぐこいのぼりを見ながら皆で弁当を食べる。地域のために共に汗を流すメンバー同士の団結を感じる時間だ。

「おかげさまで少しずつですが、こいのぼり掲揚の認知度が上がってきました。市民の方から『使わなくなったこいのぼりがあるから取りに来てほしい』などと問い合わせをいただくことも増えています」(片山会長)

今はこいのぼりを買い求める家庭は少なく、掲揚中に傷んでしまうものもあるため、ライオンズで保管している数も随分減っているが、ストックにはまだ余裕があるとのこと。世の中が変わろうとも、こいのぼりに込められた子の成長を願う思いに変わりはない。ライオンズが掲げる色鮮やかな鯉たちはこれからも、元気に空を泳ぎ続けるだろう。

こいのぼりが泳ぐ夢の森公園の水辺エリアには、「目指せ! 日本一のカキツバタ」を合い言葉に市民の手で育まれてきた、約3万本のカキツバタが群生している。このエリアはかつて田んぼだった場所で、公園造成の際に用水路などに生えていたカキツバタをボランティアが移植し、数を増やしてきた。柏崎ライオンズクラブの活動は、柏崎の新たな観光名所をつくろうというこの取り組みにも大きく貢献している。

昨年11月に公園開設15周年を祝って開かれた「里山の感謝祭」では、「市民の資源を利活用しSDGsを推し進めながら地域の観光力強化に貢献した」として、柏崎ライオンズクラブに感謝状が贈られた。5月中旬にはカキツバタの花が見頃を迎え、こいのぼりとの共演が楽しめる。クラブではこの風景が、柏崎の春を彩る風物詩の一つとして定着することを願っている。

2023.06更新(取材・動画/砂山幹博 写真/関根則夫)

●関連情報(外部リンク)
柏崎・夢の森公園 https://yumenomori-park.jp/