海外の活動 闘病を支える
奇跡のロンパース

闘病を支える奇跡のロンパース

ワシントン州にあるラ・センター ライオンズクラブのイーディ・ブラノン第1副会長はフェイスブックで、裁縫が得意な人に協力を求める地元女性の投稿を見付けた。最初はよくある裾上げかボタン付けの依頼だろうと思ったが、そうではなかった。女性にはテネシー州に住む友人がいて、その娘はまだ生後7カ月だが、小児がんの化学療法を受けている。病室の室温は低く保たれているため、看護師は赤ちゃんの胸に埋め込まれたCVポートに点滴をつなぐ時に保温用の毛布をかけるのだが、赤ちゃんはすぐに蹴飛ばしておむつだけの状態になってしまう。そこで体を冷やさないためのアダプティブウェア(障がいがある人も着やすい機能性を備えた服)を探しているが、なかなか見付からないのだと言う。ブラノンはその時、夫が人工透析を受けていた時にスウェットシャツにファスナーを付けたことを思い出した。そして孫が着ていたロンパースに手を加えて、アダプティブウェアのロンパースを作った。それは後に「奇跡のロンパース」と呼ばれることになる。

ブラノンは闘病中の赤ちゃんの母親に試作品を送ってフィードバックをもらい、調整を加え、裁縫仲間やライオンズ・メンバーにも意見を求めて改良を重ねた。更に、思い切って地元クリニックの小児科医を訪ね、自分の作品を見せてみた。するとこれが大好評で、100着を縫うことになった。

奇跡のロンパースは定番のロンパースの右胸に穴を開け、裏地付きボタンホールとポケットのような前立てを付けたもので、赤ちゃんが着たままでも大人の手がCVポートに届いて簡単に点滴の付け外しが出来る。ブラノンはラ・センター ライオンズクラブでこの事業に取り組むことを提案し、また複合地区内の他のライオンズクラブにも協力を求めた。すると多くのクラブに加え、地元のマーケットや大勢の市民からも寄付金やロンパース、材料となる布などの寄付が相次いだ。また、キルティングを趣味とするグループも紹介された。ブラノンがこのグループに数十着分のロンパースと材料を提供して製作を依頼すると、彼らは自らロンパースを買い足して300着近くも作ってくれた。
「とても可愛くて完璧な奇跡のロンパースでした。ロンパースの地の色に合うようにポケットの生地を選んで仕上げてくれました」

2023年の初めまでに、奇跡のロンパースはオレゴン州の二つの小児病院でも採用された。ブラノン第1副会長らは更に多くの病院で導入されることを期待している。またこうした活動の中で、人工透析をしながら腎臓移植を待っている子ども用のアダプティブウェアを作ってもらえないかという相談も受けた。ブラノンは言う。
「長期的には、奇跡のロンパース事業は全国展開することも可能だと考えています。ライオンズ・メンバーによる奇跡のロンパース専門の製作者グループを結成するつもりです。もちろん、これらは売り物ではなく贈り物です。小児がんはライオンズのグローバル重点分野の一つであり、奇跡のロンパースはそのニーズに対する私たちなりの回答です。経済的に余裕のないお母さんたちは特に、赤ちゃんの食事や投薬と共に、自身の生活をコントロールするのが難しく、病気に振り回されてしまいます。だから彼女たちの負担を少しでも軽くしたいのです」

2023.06更新(国際協会配信 文/ジョーン・ケアリー)