トピックス 広島の大学生が国際社会に
薬物乱用防止をアピール

広島の大学生が国際社会に薬物乱用防止をアピール
薬物乱用防止の共同メッセージを発信するUNODCユース・フォーラム2023参加者

国連の麻薬政策決定の中核的機関である麻薬委員会が、3月13日から17日にかけてオーストリア・ウィーンで開かれ、これに関連するイベントに広島の大学生3人が参加して、日本のライオンズクラブが推進する薬物乱用防止活動について発表した。

派遣されたのは、広島出身で明治大学4年の横路萌さん、広島修道大学2年の松長明音さん、比治山大学3年の西沖魁晟さんの3人で、公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター(DAPC/藤野彰理事長)と日本のライオンズが共同で認定する薬物乱用防止教育認定講師の資格を持つ。日本における薬物乱用防止の取り組みと重要性、その活動が若い世代に引き継がれていることを国際社会へ発信するため、日本の若者代表としてDAPCが選抜し、大学生講師の育成に取り組む広島フェニックス ライオンズクラブ(中村幸裕会長/60人)と、一般社団法人日本ライオンズ(村木秀之理事長)、八複合地区の協力によって派遣が実現した。

ウィーン派遣を前にした3月7日、DAPCの藤野理事長(左から4人目)、日本ライオンズの村木理事長(左から2人目)と大学生3人が首相官邸を表敬訪問。抱負を述べた大学生たちに岸田文雄首相から激励の言葉が贈られた

大学生たちが参加したイベントは二つあり、「『ダメ。ゼッタイ。』~愛する自分を大切に」と題して行われた麻薬委員会のサイドイベントには3人が、国連薬物犯罪事務所(UNODC)ユース・フォーラム2023には日本代表として横路さんが参加した。

14日に行われたサイドイベントは、DAPCが「ダメ。ゼッタイ。」国連支援募金(※)30周年を記念して企画運営を手がけ、日本政府主催で行われたもので、UNODCのガーダ・ワーリー事務局長も参加。国連支援募金による支援プロジェクトが実施されている開発途上国と日本の若者が、薬物乱用防止をテーマにしたスピーチを行った。

日本の大学生3人からは、日本の学校の多くが薬物乱用防止教室を実施していること、広島のライオンズクラブが大学生の講師が子どもたちを指導するシステムを作って相乗効果を生み出していることなどを紹介。最後は次のような力強いメッセージで、スピーチを締めくくった。
「国ごとに状況は異なりますが、私たちは皆、薬物乱用を防止するという共通の目標を持っています。若者たちが共に手をつなぎ、共に歩み、目標に向かって進むことが、私たちをより明るい未来へと導くと確信しています」

大学生の一人、松長さんは、サイドイベントでの英語によるスピーチを聴衆に訴えかけるものにするため、英語を母国語とする先生の指導で練習に励んで本番に臨んだ。
「スピーチの中で主張したのは、大学生のような若者が中高生に対して薬物乱用防止啓発の教室を開くと、年齢が近いために親近感が湧き、より真剣に聞いてくれるといったメリット、そして、子どもたちには小さくても良いので何か没頭出来る目標を見つけ、薬物乱用とは無縁の人生にしてほしいということ。今回の経験を、これから薬物乱用防止活動を行う後輩にフィードバックしていきたい」(松長さんの感想)

被爆地広島で平和教育を受けてきた若者として、強い意識を持ってスピーチに臨んだのは西沖さん。サイドイベントに参加し、若者が世界に発信することで、新しい考え方、価値観が生まれると感じたと言う。
「貴重な経験をした私には、未来の若者たちに薬物乱用防止の必要性を伝える責任がある。私の将来の夢は中学校の教師になること。この経験を未来を支える子どもたちに伝え、子どもたちに自ら考える力を育みたい。それによって、日本の若者が中心となって世界に薬物乱用防止を訴えることが出来ると考える」(西沖さんの感想)

サイドイベントでスピーチを行う大学生たち

横路さんが参加したUNODCのユース・フォーラムは、2012年から年に一度開かれているもの。各国から薬物乱用防止や健康増進、若者のエンパワーメントの分野で活躍する若者たちが集い、アイデアやビジョンを交換して、国際的な政策立案者に共同メッセージを伝えている。ユース・フォーラム2023は3月13日から15日にわたって開催され、28カ国34人の若者が参加。日本からは今回が初参加となった。

若者たちは3日間にわたり、学校や地域社会における薬物乱用防止に若い世代がどのように貢献出来るかを議論し、麻薬委員会の本会議で共同声明を発表。声明では、教育、社会プログラム、政策を通じて予防の基盤を築くことで薬物乱用を未然に止めることが出来るとした上で、「薬物乱用防止の悪循環を断ち切るには、若い世代が積極的に関与することが不可欠である」と訴えた。

参加した横路さんは、さまざまな国の若者と過ごし、自分がどれだけ小さな世界で生きていたのかを知ったと言う。
「世界中から多様なバックグラウンドを持った若者が集まり、薬物乱用防止という一つの大きな国際問題に向き合う経験から、多くの刺激を受けた。国によって『当たり前』が異なる価値観の違いを実感すると共に、私たちの抱える問題を他の国ではこのように解決しているのかと知ることも出来た。これを機に国際的な問題への関心をより一層高め、世界に明るい未来をもたらすような貢献が出来る人になりたいと強く思った」(横路さんの感想)

2023.04更新(取材/河村智子 写真提供/広島フェニックス ライオンズクラブ)

※「ダメ。ゼッタイ。」国連支援募金
1993年に始まった麻薬・覚せい剤乱用防止センターによる「ダメ。ゼッタイ。」普及運動に呼応して、国際協力による薬物乱用のない社会環境づくりのために実施される募金キャンペーン。これまでに約7億4200万円が国際連合薬物犯罪事務所(UNODC)に寄付され、開発途上国延べ644カ国、775プロジェクトの支援に充てられた。

●関連情報(外部リンク)
公益財団法人麻薬・覚せい剤乱用防止センター https://www.dapc.or.jp/

●関連記事
「次代の若者へつなぐ薬物乱用防止活動」(2023.04更新)