投稿リポート 嘉納治五郎生誕の地で
中学生の柔道団体戦

嘉納治五郎生誕の地で中学生の柔道団体戦

2月5日、神戸市の人工島・ポートアイランドにある神戸学院大学の柔道場を会場に、小さな柔道大会が開催された。大会名は「第1回みなと神戸 迷える子羊CUP中学生柔道大会」だ。神戸みなとライオンズクラブ(和氣大輔会長/37人)は事務局をポートアイランドにある宿泊施設に置いており、今年の初めに大会主催者の迷える子羊CUP実行委員会から、「ポートアイランド内の柔道場で初めての試みとなる団体戦のみの柔道大会を開催したい。協力いただけないか」との相談を受けた。聞けば開催日が2月だと言うから、さあ大変。まずは大会の概要を確認し、急いでクラブの理事会に諮ることに。実は当クラブには、長年在籍しクラブ会長も務められて、3年前に亡くなった飯伏裕二さんというメンバーがいた。柔道四段の彼は若き日に神戸学院大学柔道部で主将を務め、全日本学生柔道選手権にも出場した経験があるたくましいメンバーだった。そうしたことからも、ぜひ今回のご縁を大切にしたいという思いがあり、大会への支援が決定した。

当日、大会には地元神戸はもちろん、東は滋賀県、西は山口県や愛媛県からもチームが参加した。クラブの奉仕委員長であり柔道弐段の私が大会あいさつを行い、試合がスタートした。近年は東京オリンピックなどでも男女混合団体戦が導入されているが、学生柔道の試合では男女別の団体戦が一般的で、男子は5人、女子は3人で競われる。本来は各中学校の柔道部としてチームを編成するが、所属中学で人数がそろわない場合は2校の混成チームや、「拠点校チーム」としての参加もあった。拠点校方式とは、柔道部がない学校や一人部員などの選手が拠点となる学校に集まり、競技を続けられる環境を作るもの。今大会では、大阪府堺市から出場した拠点校チームが男子団体戦を制した。当クラブでは4年前に、東京オリンピック柔道で金メダリストとなった阿部一二三・詩兄妹の出身道場が主催した小学生対象の柔道大会を支援したことがある。しかし中学生ともなると体格もぐっと大きくなり、技が決まった時の迫力はものすごく、柔道の試合を初めて生で見るクラブ・メンバーは驚きの表情であった。

大会主催者に「大会名に迷える子羊とあるが、どういう意味が込められているのか?」と質問したところ、意外な言葉が返ってきた。「コロナ禍の影響でこの3年、室内対人競技である柔道は練習や対外試合などが制限され、選手である生徒はもちろん、指導する若い顧問も経験や人脈が希薄になりつつある。そんな迷いの状況から一歩踏み出す機会としたい」と。人と人とのつながり、そして切磋琢磨(せっさたくま)し合えるライバルとの出会い。これもまた、柔道創始者である嘉納治五郎師範の教え「自他共栄」の精神に通ずる。互いに信頼し助け合えれば、自分も世の人々も共に栄えることが出来る。そうした精神を柔道で養おうというものだ。今では日本よりも欧米各国の方が競技人口が多いと言われる柔道。創始者生誕の地・神戸で、新たな出会い、つながりが生まれたことを、メンバー一同うれしく思った。
  
2023.03更新(奉仕委員長/大島良彦)