獅子吼 生き続ける
父の劇団"夢"への思い

生き続ける父の劇団”夢”への思い

2022年10月1日、2日の2日間、茨城県坂東市民音楽ホール・ベルフォーレにて、青少年健全育成事業の資金獲得を目的とした岩井ライオンズクラブ主催のチャリティー観劇会が開催された。演目は、劇団「夢」による「花街の母」(染谷三十郎作)と「めおと道」(木村博作)の2本。ここでは、劇団「夢」と、その創設者であり、私の父でもある染谷三十郎の話をしたい。

父は元々芝居が好きで、本人によると戦後の一時期は素人演芸と題して地元を中心に公演して人気を博し、戦後の荒廃の中、数少ない娯楽として皆を楽しませていたのだと言う。本格的に芝居に取り組むようになったのは60代半ばの頃だ。1993年に旧岩井市主催の敬老会で一人芝居「岸壁の母」を演じ好評を得たのをきっかけに、劇団の結成を決意。市民劇に出たことがある旧岩井JC(青年会議所)のメンバーや、芝居心のある若い人たちを誘い、翌年、6人ほどで劇団「夢」を立ち上げた。

劇団は出来たものの最初は素人芝居でままならず、千葉県野田市で劇団を主宰していた演出家・梅田宏氏に指導を仰ぎ、何とか形を整えていった。初めて上演した演目は「番場の忠太郎」。会場は地元のコミュニティーセンターで、観客は200人ほどだった。それから毎年1回公演するようになり、10年を過ぎた頃からベルフォーレで上演するようになった。役者もうまくなり、毎年の公演を楽しみにしてくれる固定のファンも出来て、今では1500人ほどを集客する坂東市の文化の一つとなっている。中には子役として出演した人が大学で演劇活動を行い、その後プロを目指したという話も聞く。「夢」の演目は劇作家・長谷川伸による「瞼(まぶた)の母」「沓掛(くつかけ)時次郎」「一本刀土俵入り」「関の弥太っぺ」など、股旅(またたび)ものが中心だ。とにかく誰が見ても分かりやすく、日本人が好む義理と人情を表現する芝居を一貫して行ってきた。

染谷三十郎は11年前に他界したが、劇団員がその遺志を継ぎ、過去の台本をリニューアルして上演を続けていた。ところが近年、コロナの影響で長らく開催出来ず、一時は劇団の解散も真剣に検討されるほどの状況となった。それでも「坂東の文化を絶やしてはいけない」という思いで、団員らが力を合わせて乗り越えた。「夢」のような市民劇団は近隣地域には他に存在せず、個性豊かな坂東の誇るべき文化なのだ。

今回、岩井ライオンズクラブのチャリティー観劇会として公演が実現し、成功を収めることが出来た。市民の皆様にも大変喜ばれ、ライオンズクラブの活動にも理解を深めていただけたと自負している。劇団は来年、結成30年を迎える。これからも「夢」の名に恥じることなく、坂東市民に夢と希望を与え、潤いのあるまちづくりに寄与する劇団として、活動を続けてほしいと願っている。
(チャリティー・LCIF委員会委員長/2009年入会/68歳)

2023.01更新