奉仕活動環境整備活動から転じた
ふれあいアジサイ祭り

環境整備活動から転じたふれあいアジサイ祭り

6月12日、茨城県筑西市にある県西生涯学習センターで第14回ふれあいアジサイ祭りが開催された。これは生涯学習センターと県教育委員会が主催し、下館シニア ライオンズクラブ(石井哲雄会長/29人)と県西おやじの会が共催するイベントだ。毎年6月に行われており、地元の人に親しまれている。

1994年に結成された下館シニア ライオンズクラブは全国で初めて出来た「シニアクラブ」だ。シニアクラブに厳密な定義があるわけではないが、現役を引退した高齢者世代が中心となっている。下館シニア ライオンズクラブの結成を皮切りに全国でも結成が増え、今では40を超えるシニアクラブが活動している。2003年には札幌に全国のシニアクラブが集まってシニア・フォーラムが開かれた。以後、2〜3年に1度のペースで開催し、情報交換と交流を行っている。

下館シニア ライオンズクラブの会員の平均年齢は78歳。公務員や教員などをリタイアした人が集い、引退後も社会とつながり、地域貢献出来る機会づくりを意図して結成された。メインとしているのは金銭的奉仕ではなく、労力奉仕。シニアならではの経験、技術、知識を活用して地域に奉仕することを意図して活動している。

そんな下館シニア ライオンズクラブは結成当初から県西生涯学習センターにアジサイを植栽し続けてきた。この中心となったのが昨年惜しまれながら亡くなった故・塚越喜一郎さんだ。94年11月、クラブが結成され、生涯学習センターも開所された。どちらも塚越さんが尽力して実現したことだった。98年、この二つをつなげるものとして、塚越さんが育てていたアジサイの苗約80株をクラブ・メンバーで植栽した。これが好評。以後も継続しようという話になり、各メンバーが苗を育てて植えるようになった。毎年100〜150本を植え続けたところ、センター敷地と近隣街路がアジサイでいっぱいに。現在では合計1800本ほどのアジサイが花を咲かせる名所になった。

クラブではその後もアジサイを育て続けた。育てた苗はアジサイが見頃を迎える時期にセンターを訪れた人に無料配布した。この活動が地元で定着。2008年からは、各種イベントを併せた「ふれあいアジサイ祭り」が開催されるようになった。アジサイの無料配布は毎年、祭りの開始前から長蛇の列が出来る目玉イベントだ。クラブがアナウンスしているのは200本の無料配布。だが実際に配る数はもっと多い。というのも、メンバーがそれぞれの家で育てているため、本数が把握しきれないのだ。加えて、苗が急に枯れてしまうこともあり、当日にならないと正確な本数が分からない。事前に例会で各メンバーから数を申告してもらうが、少なめにアナウンスすることにしている。

下館シニア ライオンズクラブはアジサイの無料配布に加えて、飲み物の無料提供と農産物のバザー、薬物乱用防止キャンペーンを実施している。農産物もアジサイと同じくメンバーが育てたもの。バザーの収益金は地元の施設に時計を寄贈する事業資金にしている。時計は旧下館市(2005年に同市と三つの町が合併し筑西市となった)の役所、公民館、全小学校、中学校に寄贈してきた。旧市内の施設には寄贈を終えたため、5年前から筑西市内の公共施設に寄贈。これまでに合わせて37個を寄贈している。

当初は環境整備活動として始めたアジサイ植栽事業。いつの間にか地域の町おこしにつながっていった。更にアジサイの生育を各会員が行うことで、メンバー間のコミュニケーションが活発になっているという。もちろん無理強いはしないが、新会員にも出来る範囲で挑戦してみないかという提案はする。石井会長も入会した当時、先輩から「アジサイをやってみないか?」と声をかけられた。仕事をリタイアしていた石井会長は日々の生活に張りが出ると思い、挑戦することに。初めてのことばかりで分からないことも多かったが、他のメンバーからコツを聞くなどして対処していった。アジサイをうまく育てられるようになったこともうれしかったが、アジサイの生育を通して他のメンバーとの交流が深まったこともプラスだったという。

昨年のふれあいアジサイ祭りは新型コロナウイルスの影響で中止。しかし今年はコロナで落ち込んだ気持ちを少しでも癒やしてほしいという気持ちから、規模を小さくして実施した。生涯学習センターと協議し、来場者には入り口で検温し、問診票の記入をしてもらう。ここを通過した人にリストバンドを付けてもらい、入り口を通過済みかどうかがひと目で分かるようにした。今年は800人以上が来場した。

今年もアジサイの無料配布は大人気で、開会式前から長蛇の列。入り口を通過後、走って列に並ぶ人が散見されるなど、地元住民の方々が楽しみにしているのが見て取れた。アジサイを選ぶ際に密にならないよう、アジサイ株のある場所に入る人数をメンバーがコントロール。家族で楽しそうに選ぶ姿が点在した。今年は400株以上を用意していたが、開始から2時間ほどで配布が終了するほど盛況だった。

センターの館内では薬物乱用防止キャンペーンや、アジサイの写真と絵画の展示を実施

地元にすっかり定着したアジサイ祭り。県西生涯学習センターを彩るアジサイと合わせて下館の観光資源となりつつある。20年以上かけてクラブが取り組み続けてきた結果だ。アジサイの育成も、バザーのための農産物作りも、年を重ねるごとにメンバーの気合が増しているという。「シニア」という名を冠しているが、まだまだ歩みを緩める気はないようだ。

2021.07更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)