活動報告ベトナムの施設で
歯科治療奉仕

ベトナムの施設で 歯科治療奉仕

1975年にベトナム戦争は終結したが、その傷はまだ癒えていない。痛ましいことに枯葉剤による遺伝子異常は、直接それを浴びた人々のひ孫、第4世代にまで達しており、影響を受けた子どもの数は数百万人もに上る。

大宮グリーン ライオンズクラブ(52人)のメンバーで歯科医の野本恵子会員は、13年前から毎年数回ベトナムへ渡り歯科治療ボランティアを続けている。野本会員からこのすばらしい奉仕の話を聞き感銘を受けていた当クラブの会員たちは個々に応援してきたが、今期はクラブの事業として取り上げ、金銭、物資、労力面での支援を行うことを決定した。

支援先はホーチミンにある施設で、貧しい人たちのために無料で子どもの教育・介護・運動療法を行っている「チュン タム NCN ノイ チョ ニャウ」。この施設の子どもたちは骨形成不全症という先天性の病気により骨がもろく骨折しやすいため、生涯を通じての治療が必要で、少なくとも数年に一度の外科手術を繰り返す。それでも自力で歩ける子は少なく、多くの子はお尻でいざって移動する。

歯も生まれつきの欠損が多く、エナメル質形成不全で虫歯になりやすいため、予防処置、進行抑制、虫歯治療が必須となる。また免疫力が低く、口腔内環境が悪いと手術の際に感染症や肺炎を引き起こすリスクが更に高くなる。口腔内ケアは大変重要なわけだが、現状ではボランティア頼みとなっている。

当クラブの三役である鷲谷みさ江幹事、松本真実会計と会長の私は、野本会員と、もう一人の歯科医・亀井勝行氏、通訳のブイ・グエンさんと共に1月10~14日の日程でベトナムを訪問、施設への支援品として簡単に歯磨き効果が期待出来る洗口剤などを携えて出発した。

ホーチミンは約800万人もの人口を抱えるベトナム第2の都市。熱帯気候で年間を通して気温は高いが、私たちが訪れた1月は乾季に当たり過ごしやすかった。目的の施設は、ホーチミン空港から車で1時間ほどの場所にあり、現在は26人の子どもたちが暮らしている。現地ではホーチミン歯科大学歯科医師であるルン・ヴァン・トミ医師(ホーチミン歯科口腔病協会副会長)が、自分の病棟からスタッフ2人を同行し機材も用意して待っていてくれた。

診療の準備が整うまで、まずは子どもたちを集めて私が「はみがききちんと!」という紙芝居を見せた。日本語の紙芝居なので、今回の訪問で通訳や段取りの全般を担ったブイさんが隣に立ち、ベトナム語に通訳してくれた。紙芝居は大好評! 子どもたちの笑い声を聞いて、私たちも本当にうれしくなった。紙芝居の後、日本から持ってきた歯ブラシを子どもたちに配布した。

次はダンススタジオの経営者で講師でもある松本会計が、日本から持ってきたボンボンを使って子どもたちと一緒にダンスをした。ボンボンは、スタジオの生徒さんのお母様方が使わなくなったものを集めてくれた。また生徒さんからは、ベトナム語を調べて書いてくれた手紙も預かっており、子どもたちに手渡すととってもうれしそうだった。

さあ、いよいよ歯の診察と治療の時間。一人ひとり検査し、移動式のレントゲンも使用して、パソコンに映し出された画像も確認していく。治療が必要な子は治療台に呼ばれる。他の子はそれを心配そうに見守っている。治療を受ける子どもたちはとても我慢強く、全く泣いたり騒いだりしない。自分たちのために日本から来てくれたことが分かっているのだろう。なんて偉いのだろうと泣けてきてしまった。

治療の間は私が野本医師のアシスタントに、鷲谷幹事が写真撮影とカルテ係になり、若い松本会計は歯に詰める小さなコットンを作ったり、プレゼントのおもちゃを組み立てたり、子どもたちと遊んだりと大忙し。携帯の翻訳アプリで子どもたちと会話もし、やっぱり若い人の働きは違う!と感心しきり。仲良く楽しそうにおもちゃで遊ぶ子どもたち。大きく口を開けたワニのおもちゃの周りに集まった子らは、配った歯ブラシでワニの歯をゴシゴシと磨いていた。

治療の終わった子にはごほうびが待っている。日本から持って行ったお菓子。今日だけは特別、食べたらちゃんと歯を磨いてね! みんな「ありがとう」と日本語でお礼を言って受け取ってくれた。

施設で母親と一緒に暮らす生後8カ月の赤ちゃんがいた。しかし体の大きさはせいぜい2カ月くらい。母親は健常者として生まれたが、枯葉剤の被毒3世であるその子に影響が出てしまったのだ。小さな赤ちゃんは元気に声を上げて泣くことも出来ず、私たちが側に寄ると不安そうな目を向けた。私たちに出来ることはないだろうか、心からそう思った。

今回、治療を受けた子どもは22人。日本から運んだ20L入り洗口剤1タンクと、通常ボトル入り5本を施設へ寄贈した。5月に野本医師が来訪する時にも、20L入りを一つ運んでくれることになっている。先生方、本当にお疲れ様でした。みんなバイバイ! また必ず来るから元気でいてね!

 
2020.03更新(会長/北川けい子)