取材リポート 子どもたちとブナ植林を実施

子どもたちとブナ植林を実施

6月10日、宮城県加美郡加美町にある荒沢自然公園に、宮城県北西部にある大崎市、栗原市を中心とした地域を活動拠点としている332-C地区5リジョン2ゾーンのライオンズクラブ(高清水ライオンズクラブ・築館ライオンズクラブ・栗原若柳ライオンズクラブ・古川中央ライオンズクラブ・志波姫ライオンズクラブ・加美ライオンズクラブ)の面々が集まっていた。目的は、ブナの植林だ。もともと、この地域にはブナがたくさん生えていた。しかし、それらのブナが非常に多く伐採された時期があった。これによって地盤が緩み、土砂崩れなどの原因となってしまっていたという。そこで1990年から中新田ライオンズクラブがブナ植林事業を始めた。今では加美ライオンズクラブ(熊谷雅之会長/15人)を中心にゾーンの合同事業として継続実施している。同じゾーンに属するクラブ同士の交流の機会としても貴重な奉仕事業だ。

荒沢自然公園のある一帯は大崎耕土と呼ばれ、2017年、国連食糧農業機関(FAO)によって世界農業遺産(GIAHS)に認定された。日本では9地域目、東北では初めての認定である。

大崎耕土は春から夏にかけて冷たく湿った東からの風「やませ」による冷害や洪水、渇水が頻発する地域だ。農業をするには難しい条件の中、この地に住む人々は鎌倉時代から農家が主体となって水管理システムを構築し、作物を育ててきた。こうした環境で、餅や発酵食品といった多彩な郷土食、民間信仰や農耕儀礼といった文化が生まれ、受け継がれてきたことも評価されている。

これらの豊かな農業文化を支える水源地としても重要なのが荒沢自然公園周辺の環境だ。ライオンズクラブでは次世代にこの環境を残していくため、年に一度、ブナ植林をしている。植林に際しては環境への影響も考慮に入れ、実施することが重要だ。ライオンズクラブではゾーン内での打ち合わせを重ねると共に、役場の協力を得て植林作業を進めている。

この日はあいにくの雨だったが、メンバーは下草刈りなど植林のための準備に余念がない。今回は縁あって地元加美の小学生ブラスバンドの子どもたちを招待し、植林を体験してもらった。そのため、ケガなどがないよう、念入りに準備を進めた。子どもたちのためにテントも張る。自分たちがどれだけ濡れようがお構いなしだ。

子どもたちには開会式で演奏をしてもらう。普段と違った環境で演奏することや、年齢の離れたメンバーとの交流は子どもたちにとっても良い経験だ。子どもたちは雨の中でも堂々とした演奏を披露。ライオンズのメンバーもおのずと笑顔になる。そして植林作業。子どもたちは経験したことのない作業に戸惑いながらも、メンバーの助けを借りてブナの木を植えていく。初めての体験は子どもたちにとって、良い思い出になったに違いない。

世界農業遺産認定によって世界的にも知名度が上がってきた大崎耕土に水を供給する水源地を守るべく、5リジョン2ゾーンでは今後もこの事業を続けていく予定だ。伐採によって姿を消しそうになったブナ林。ライオンズの長年の努力によって、徐々にかつての姿を取り戻しつつある。

2018.07更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)