テーマ青少年の生きる力を育む
教育プログラム

青少年の生きる力を育む教育プログラム

ライオンズクエストは、青少年の生きる力を育むことを目的とした教育プログラムで、1975年に設立されたアメリカのクエスト・インターナショナルにより開発された。84年にはクエスト・インターナショナルと提携したライオンズクラブ国際協会が普及活動に乗り出し、プログラムの国際化が進展。2002年にライオンズクラブ国際財団(LCIF)がプログラムの権利を取得してからは、ライオンズを代表する青少年プログラムとして世界中で展開されている。日本では01年4月に、埼玉県川口市立芝東中学校がパイロット校となり、日本で初めてライオンズクエストを取り入れた授業を開始。現在では日本各地の学校で活用されている。

ライオンズクエスト・プログラムは、家庭、学校、地域の中で日常生活を送る子どもたちが自分の意見を持ちつつ、友達や周囲の人たちとうまく協力して、自分らしく行動する力を身に付けられるように構成されている。中でも、コミュニケーション能力や感情対処、問題解決、目標設定といったスキルを身に付ける「ライフスキル」の学習が中心となっている。

ライフスキルとは簡単に言えば、人間関係やストレスなど、日常生活で直面するさまざまな問題に、適切に対処するのに必要な能力のこと。親など周囲の人の行動を見て次第に身に付けていったりするもので、学習や経験によって獲得可能な能力だとされる。

ライオンズクエストの授業では、まず最初にその日の授業のテーマにあった名言名句「今日の言葉」を先生が紹介。最後には「振り返り」のワークシートで授業内容をおさらいする。目的意識を植え付け、更に繰り返すことによって学習効果が上がるよう工夫されている。そして授業の中で、何よりも目立つのが「生徒たちによる積極的な発言」である。

ライオンズクエストでは、発言に関して間違いというものがないため、生徒たちはお互いに意見を言いやすい。そのため生徒同士のコミュニケーションが増え、クラスの雰囲気が良くなり、生徒それぞれの発表の仕方や聞き方がうまくなるといった変化が見られる。無口で普段あまり目立たない生徒たちにも発言の機会が与えられるので、他の授業で見せないような積極性も見られるようになる。

また、このプログラムでは、こうした生徒の心の教育を推進する一方で、「ワークショップ」と呼ばれる教師用の研修にも力を注いでいる。ワークショップは、プログラムを実施する指導者が、授業を疑似体験し、ライフスキル教育への理解を深めるためのものである。

人が変わる場合、他人から言われて変わろうとするより、自分で気付いて主体的に変えようとする方が変わるのが早いし達成しやすいもの。それは大人(教師)も子ども(児童・生徒)も同じで、考えるきっかけを与え、主体的に変わるチャンスを与えるのが、ライオンズクエスト・プログラムなのである。

2011年10月、福岡市でライオンズクエストを紹介するセミナーが開かれた。セミナーにはライオンズクラブの会員の他、多くの教育関係者も参加。その中に当時の福岡県春日市立須玖(すぐ)小学校の小宮都賀最(こみやつかさ)校長がいた。プログラムに興味を持った小宮校長は、当時、福岡地区のライオンズクエスト推進委員だった井手口敬介(現地区ライオンズクエスト委員長)に連絡。井手口委員は所属する、つくし中央ライオンズクラブ(79人)の協力を得て、12年1月に教職員向けのミニ・フォーラムを開催した。結果、参加した教員全員がプログラムを支持し、ライオンズクエストの導入が決まった。

その頃はちょうど道徳が教科化される前兆のあった時期で、従来の学習スタイル見直しの必要性を教育関係者が感じていた時期でもあった。ライオンズクエストは将来生きていく上での術を学ぶプログラムだが、同時に道徳や特別活動なども包括した総合プログラムであるため、頭で理解したことを行動に移す、実践化という部分で、ライオンズクエストの研究された展開のノウハウは、道徳教育推進校でもある須玖小学校にとっては魅力的だったのだろう。

その年の夏、須玖小学校で初のワークショップが開催された。猛暑の中、教職員全員が2日間、エアコンのない多目的ホールで汗だくになりながら受講。つくし中央ライオンズクラブも、初めての事業にもかかわらず、送風機をレンタルしたり、氷の柱を立てたり、冷たい飲み物を絶えず準備したりして暑さ対策に努め、春日の子どものためにと献身的なサポートを実施。常に10人を超えるメンバーが出席し、ねぎらいの声掛けを絶やさなかった。

当時はまだ日本語の小学生版が開発中だったため、中学生を対象としたプログラムを小学生向けにアレンジして2学期から導入。翌年2月には早くも公開授業が行われた。その様子を参観した、つくし中央ライオンズクラブの大村哲也元会長は、
「自分の子どもや孫のような世代の先生たちが、生徒たちと一緒に生き生きと授業を進めている姿に感動しました。ライオンズクエストでは、まずワークショップを体験した先生が劇的に変わり、次いで授業を受けた生徒たちが変わるという良い循環が生まれるのです。その結果、明るくて安心出来るクラスが誕生します。そこにはいじめなどは全く発生しないのです」
 と、話している。

その後、須玖小学校の子どもたちが進学する春日中学校から、「須玖小の生徒たちは何かが違う」と須玖小に照会があり、それがライオンズクエストによるものと確信した同中がプログラムの導入を決定。更には同じ中学校区の春日小学校にもその輪が広がり、全国的に見ても画期的な公立校トライアングルでの普及が確立した。

また、須玖小学校では小宮校長から引き継いだ熊谷久子校長がリーダーシップをとり、各学年10時間のカリキュラムを作成、これに道徳とライオンズクエストを融合させた授業案も作り、2017年の2学期から実践されている。

取材協力/福岡県春日市立須玖小学校、篠田康人ライオンズクエスト認定講師
2018.02更新(取材/鈴木秀晃 写真・動画/田中勝明)