取材リポート 地域の名所になった
ライオンズのあじさい園

地域の名所になったライオンズのあじさい園

宇佐市四日市地区には、江戸時代に「九州御坊」と呼ばれて多くの参拝者が集った東西本願寺の別院があり、その門前町も大いににぎわった。そんな歴史ある街を見下ろす響山公園は、市民の憩いの場として親しまれ、春には桜、梅雨時には約3000本のアジサイに彩られる。

小高い山の斜面いっぱいに広がる「あじさい園」は、20年前に四日市・大分ライオンズクラブ(筌口誉士輝会長/55人)によって整備された。

アジサイが見頃を迎える6月初旬の日曜日、クラブは「あじさい観賞会」を開く。山上にある広場にテントを張り、茶や菓子を用意して来園者をもてなすのだ。今年は6月9日午前10時から12時に開催。あじさい園の花々は、朝方まで降っていた雨の滴をまとって色鮮やかに咲き誇っていた。

緩やかな斜面にあるあじさい園には、つづら折りの遊歩道が設けられている。訪れた人たちは色とりどりのアジサイを愛でながら斜面を上ってきて、ライオンズの出迎えを受ける。クラブから地元の名物「親玉まんじゅう」と緑茶を振る舞われた人たちは、ベンチに腰かけて一休みしながら、アジサイ越しの街の風景を眺めていた。

朝までの雨の影響か、来園者の出足こそ鈍かったものの、用意した200個のまんじゅうは昼前に全て配り終えた。

ちょうど満開を迎えたあじさい園では、小さな子どもがいる家族連れや、仲良く手を取り合って歩く老夫婦、友人同士のグループなどが思いおもいに楽しんでいる。

公園の近くに住むという家族は、大輪のアジサイの花をバックに、よちよち歩きを始めたばかりの幼子の写真を撮影していた。聞けば、1年前に同じ場所で写真を撮ったので、成長ぶりを残しておこうと同じ洋服を着せて来たのだそう。大切な子どもの成長を記録するアルバムに、ライオンズのアジサイが鮮やかな彩りを添えることだろう。

響山公園に「ライオンズガーデン」が出来たのは1980年。山の斜面に大きなL字をかたどるようにツツジを植えて整備した。しかし年月が経つにつれて周囲の木々が大きく育ち、雑草も増えて荒れ果てた様子になってしまった。

そこで2003年、クラブはここを修復して「あじさい園」を造ることにした。事業に必要な資金を調達するため、手品や演劇など芸達者なメンバーで結成した「ライオンズ座」や市民コーラス、吹奏楽団が出演する「春の祭典」を開催。集まった資金で大規模な造成工事を実施し、地域の新名所となることを願いつつ、市民と共にアジサイの苗木1000本を植えた。

それから7年後、見事な花を咲かせるようになったアジサイをたくさんの市民に見てもらおうと「あじさい観賞会」がスタートした。

これまでにクラブが植えた苗木は約4000株。斜面は東向きでアジサイには日当たりが良過ぎるのか、苗木が定着しにくい場所もある。施肥などは専門の業者に委託しているが、挿し木で苗木を育てて補植を行い、定着するまでは中3日を目安に散水を行うなど、維持管理に努めてきた。

そして2022年、結成60周年を迎えたクラブは記念事業としてあじさい園の拡充事業に取り組んだ。大きく育ち過ぎたアジサイは根元から切り、その枝を使って挿し木苗を育て、斜面の下に新たに整備した区画に植樹することを計画。県立宇佐産業科学高等学校に協力を求め、園芸課の生徒たちに苗1000本を育ててもらい、一緒に植樹を行った。また、視界を遮っていた大木は行政が伐採してくれ、山上からの眺望が楽しめるようになった。

拡充事業から2年目の今年、高校生が育てた苗木は順調に成長してたくさんの花を付けた。アジサイの時期に毎年訪れているという家族連れは「今年は特にきれい」と話していた。

響山公園のあじさい園は、地元ケーブルテレビが調査した大分県内のアジサイの名所アンケートで第2位にランクイン。クラブが育んできたライオンズガーデンは、地域の名所としてしっかり定着したようだ。

2024.07更新(取材・動画/河村智子 写真/宮坂恵津子)