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走れ! 蒸気機関車

コロラド州ラブランドにあるノース・レイク・パークには、かつてこの地域を走っていた蒸気機関車を忠実に再現した鉄道模型がある。模型と言えども、50人ほどの人を乗せて走ることが出来る。走行距離は約500m、所要時間は7分間、乗車賃は1ドルだ。

1977年製造のこの模型は、ラブランド市によって88年に購入された。ラブランド ライオンズクラブがその運営を請け負い、毎年5月最終月曜日の戦没将兵追悼記念日(メモリアル・デー)から9月第1月曜日の労働者の日(レイバー・デー)まで、週に6日間運行している。これによって得られた収益は、市とライオンズが分け合う。ライオンズの収益のうち70%は、地域における視力保護事業に充てられている。

2020年、ノース・レイク・パークの蒸気機関車の乗客数は累計100万人に達し、100万人目の乗客には終身有効の乗車パスが贈られた。22年にはひと夏で2万5000人以上が乗車した。運営に当たってはライオンズ・メンバーがボランティアと共に切符や軽食、土産物などを販売する他、車掌やエンジニアとして安全運行に努める。その一人、エンジニアのライル・ギルロイはこの仕事が大好きで、週3日働いている。彼は公園を訪れる多くの家族から、子どもたちと一緒に写真に入ってくれないかと声をかけられる。「ここでたくさんの友達が出来たよ」とギルロイ。

かつてこの地では、ラブランドの西にあるデビルズ・バックボーンからワイルド・ブリックヤードまで、蒸気機関車が粘土を運んでいた。デビルズ・バックボーンは地質学的にとてもユニークな場所で、高さ60mのダコタ砂岩層が3.2kmにわたりそびえている。固有の野生生物や花も見られ、ハイキングやジョギング、マウンテンバイクなどを楽しむ人々にも人気がある。

粘土に代わって人を乗せて時速5kmほどの速さで走る模型機関車は、当時を思い起こさせてくれるものだ。運行日時は、毎週火曜~日曜の正午から午後8時まで。昼にクラブ例会がある水曜日には、始発が午後2時頃にずれ込むこともある。「帽子が飛ばされないように抑えて! みんなこの列車が大好きなんだよ!」と、ゲーリー・サンプソン元6E地区ガバナーが笑顔を振りまく。彼によれば、これまでの乗客の最年少は3歳、最年長は102歳だ。機関車の走行ルートの周囲にはオープンカーや車庫、風車などが設置され、更にクラブは2019年にライオンズクラブ創設100周年の記念事業として、トンネルを寄贈した。線路をまたぐ形で置かれたトンネルをくぐり、乗客を乗せた列車が走っていく。

ここ数年は新型コロナの影響やエンジンの老朽化などで機関車を運行出来ない年もあったが、ラブランド ライオンズクラブは今年の夏までにエンジンを新しいものに交換し、車いすや歩行器で乗車出来る車両も追加する予定だ。きっとまた、以前と変わらないにぎわいが見られるだろう。

2023.03更新(国際協会配信)