奉仕活動歩いて、見て、聞いて、
ふるさとを再発見

歩いて、見て、聞いて、ふるさとを再発見

中国地方の最高峰、大山(だいせん)を遠望出来る桜並木は、1985年に廃線となった国鉄倉吉線のレール跡に設けられた遊歩道。赤いジャンパーを着たライオンズ・メンバーに率いられてウォーキングを楽しむのは、倉吉ライオンズクラブ(山本庄英会長/39人)が主催する「ふるさと再発見ウォーク」の参加者だ。ここまで約5kmの道のりを歩いてきてやや疲れが見えていたが、見頃を迎えた桜に元気づけられて足取りも軽くなったよう。この並木道を過ぎたら午前の部のコースが終わり、午後の部に備えてひと休みする。

地域に残る文化財や名所を見て歩くことで、郷土の風土や伝統文化を再発見してもらおうというこの催し。21回目の今回は「ふるさと再発見!お散歩ウォークin小鴨」と題し、春まっ盛りの4月3日に行われた。

2020年11月に開催した前回からは感染症対策のため参加者定員を半分にし、受け付け時に消毒と検温を実施。また各班に1人ずつ消毒液を持ったメンバーを配置してこまめに手指消毒をしてもらった

「お散歩」という気軽なネーミングだが、午前と午後で歩く距離は計10km以上に及ぶ。ほぼ平らな道のりとはいえ健脚向きのコースだ。午前9時、集合場所の小鴨コミュニティセンターには、ストックを携えて普段からウォーキングに励んでいるらしいグループや、小さな子どもを連れて3世代で参加した家族など、多様な顔ぶれが集まった。

参加者は46人。例年は上限120人で募集しているが、新型コロナの感染予防対策として定員を半分にした。参加費は一人500円。以前は無料だったが、当日になってキャンセルする人がいて用意した弁当が無駄になってしまったことがあった。そこで保険料等の費用として参加費を設けたところ、そうしたことがなくなり、より参加意欲の高い人が集まるようになったという。

開会式に続いてラジオ体操で体をほぐすと、参加者は四つの班に分かれて5分おきに出発した。各班には班長を先導役に5人のメンバーが付き、参加者の安全に気を配りながら一緒に歩く。

倉吉は打吹(うつぶき)城の城下町で、江戸から明治にかけて建てられた白壁土蔵群は漆喰(しっくい)の白と焼き杉板の黒、石州瓦の落ち着いた赤が独特の風情ある景観で、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。再発見ウォークではそんなよく知られた名所や史跡だけでなく、地元の人たちの手でひっそりと守られてきた文化財も巡る。

今回訪れた小鴨地区は、平安時代末期からこの地で勢力を振るった豪族・小鴨氏の居城があった場所だ。田園風景と住宅地が入り交じるのどかな風景の中、地区の歴史や民衆の信仰を伝えるさまざまな史跡が残っている。再発見ウォークで巡るのは13のポイント。地域の先人が諸国巡礼の際に背負ったという観音菩薩を祭る観音堂や、江戸時代に街道筋に建てられた金比羅灯籠(とうろう)、中には民家の脇にひっそりたたずむ「猫神石仏」のように、教わらなければ見過ごしてしまいそうなものもある。各ポイントには倉吉市教育委員会文化財課の職員が待機し、到着した各班に史跡に関する説明や地域の言い伝えなどを詳しく解説してくれる。

コース上にはメンバーが運転する救護用のマイクロバスを待機させ、途中で足を痛めたり、体調を崩した人に乗ってもらう。昼の休憩後、午後の部も元気に歩き出した3世代の親子連れは、コースの途中で子どもが疲れてしまったのでバスに乗り込んだ。その後のポイントにはバスで移動して解説を聞いてもらい、最後まで参加することが出来た。

各ポイントで市文化財課が作成した資料を配布

再発見ウォークの第1回が開かれたのは、2001年5月のこと。倉吉ライオンズクラブは2000年に結成40周年を迎え、歴史公園として整備されている伯耆(ほうき)国分寺跡に案内板を設置して市に寄贈した。この記念事業を検討する中で、ふるさとの歴史と文化、自然を再認識するために探訪してはどうか、というアイデアが出た。それを形にした第1回には100人が参加し、打吹山や白壁土蔵の街並みを散策した。

それから第3回までは倉吉博物館の協力を得ながらクラブ・メンバーが案内と解説を行っていたが、第4回からは市教育委員会文化財課が全面協力し、コース設定や各ポイントでの解説、参加者に配る説明資料も作成を担当してくれている。結成50周年の2010年には、それまで開催した10回の再発見ウォークを記録する冊子を発行。史跡や文化財を巡るコース地図と詳しい解説を一冊に収めた貴重な資料となっている。

小鴨神社では室町時代に作られた国内最古級の三十六歌仙額(レプリカ)の説明を聞いた

参加者の中にひときわ熱心にメモを取りながら解説を聞く女性がいた。倉吉市の隣にある琴浦町から初参加したこの女性は、地域の歴史や石仏、石碑に興味があるそうで、次のような感想を聞かせてくれた。
「以前から『猫神石仏』を訪ねてみたかったので、SNSで告知を見て申し込みました。道端にある石碑などは自分では見つけられないこともありますが、今日は詳しい解説も聞けてとても勉強になりました」

市内在住の男性は「長年住んでいながら、こんなに観音さんが多いとは知らなかった」と感心しきり。また、シニア世代の参加者が多い中で目に留まったのが、単独で参加していた若い男性の姿だ。現在は隣の湯梨浜町に住む男性は小鴨地区の出身で、生まれ育った地域について知りたいと思い、参加したという。それぞれの思いを胸に、自らの足で歩き、見て、聞いて、多くの再発見をした一日となった。

2022.05更新(取材・動画/河村智子 写真/田中勝明)