奉仕活動クラブで建立した
観音像と献眼碑の清掃

クラブで建立した観音像と献眼碑の清掃

1958年、「角膜移植に関する法律」が交付され、日本における角膜移植手術が可能となった。63年には日本初の「アイバンク」が設立された。厚生労働大臣の認可を受けて、提供者(ドナー)と移植を待つ患者とをつなげる役割を担う公的機関だ。

日本のライオンズクラブは初期段階からアイバンク事業の普及・啓発に力を入れてきた。東京八王子中央ライオンズクラブ(尾川朋治会長/22人)も献眼活動に力を入れてきたクラブの一つだ。クラブがアイバンク運動を開始したのは1977年のこと。「目の不自由な人に光を」をキャッチフレーズに、現在は毎年「アイバンクデー」と称した献眼登録会を実施している。クラブがアイバンク活動を始めてから延べ4000人以上が登録した。

結成30周年を記念してクラブが建立した愛眼千手千眼観音像(中央)と献眼碑(左)

2020年、21年は実施出来なかったが、19年は地元の「踊れ! 西八夏まつり」で献眼の啓発活動を行い、ドリンクや玩具を販売して、その収益を社会福祉協議会を通じて寄付。チャリティー・コンサートやゴルフ大会などを実施し、それらの収益も寄付している。これらは社会福祉協議会で「視聴覚障害者アイバンク福祉基金助成事業」として活用されてきた。

また、クラブだけの活動では限界があるため、市民を広く巻き込もうと八王子市アイバンク運動推進協議会を中心となって設立。歴代市長が会長を務めるなど、市や諸団体と協力しながら活動を続けている。

クラブでは2002年に結成30周年記念事業として、八王子市にある高尾山に観音像と献眼碑を建立した。千本の手のそれぞれに眼を持つという千手観音は、生きとし生けるもの全てを救済する慈悲の広大さを表し、千手千眼観音とも呼ばれる。アイバンク活動を広く市民に伝え、献眼してくれた方々の冥福を祈ることが目的だったため、クラブは「愛眼千手千眼観音」と名付けた。出来るだけ多くの人が訪れる場所に建立したいと考えた結果、高尾山に白羽の矢が立ったのである。

当時、高尾山薬王院の貫主を務めていた大山隆玄大僧正がクラブ・メンバーだったこともあり、話はスムーズに進んだ。大山貫主の働きで「男坂」と「女坂」の合流地点から坂道を登った先の広場に建立することとなった。広場の先には1930年にタイ国王室から寄贈された仏舎利塔もある。02年4月4日に地鎮祭を、11月30日に薬王院による開眼(かいげん)法要を行うこととなった。

市にゆかりのある人に像をデザインしてもらおうと、八王子市役所に掲げられているレリーフなどを手がけてきた日本画家で市内在住の橋本豊治さんに下絵を描いてもらった。愛知県岡崎市産の石を使用し、そこから像を掘り出したのは当時メンバーだった彫刻家の田中浩嗣さんだ。像の制作までは順調に進んだが、現地に運ぶのが大変だったという。像の重さは約3.5トン。設置する広場は標高約500m、高尾山口駅からは約3kmの場所にある。登山客が少ない朝にトラックやクレーン車を利用して山に上げていったが、像が破損しないように作業は慎重に慎重を重ねたものとなった。

献眼碑には眼球提供者のうち、遺族の了解を得た約60人の名前を刻んでいる。尾川会長の父で東京八王子中央ライオンズクラブの元会長である尾川富男さんの名前も、2017年にここに加わった。クラブでは献眼者への感謝の気持ちを込めて、1年に1度、千手千眼観音像と献眼碑の清掃を実施している。今年度は12月4日に行った。

作業当日は、朝9時30分に高尾山のふもとにある高尾登山電鉄清滝駅に集合。そこからケーブルカーで標高472mの高尾山駅まで移動する。このケーブルカーの最大斜度は31度18分で、ケーブルカーとしては日本一の急勾配となっている。前回は雪の予報で12月から3月に延期したが、今回は晴天。紅葉の季節ということもあり、多くの観光客でにぎわっていた。

千手千眼観音像と献眼碑に水をかけ、汚れを落としていく。1年間に付いた汚れは思いの外多い。それらを丁寧に洗い流していく。また、多くの人が通るため、周辺の落ち葉を掃き集める。作業中は脇を通る観光客からメンバーが道案内を頼まれるケースも散見された。1時間ほどの作業を終えた後は、すっかりきれいになった像と碑に線香を手向ける。メンバー一人ひとり、献眼をしてくださった方に思いをはせて線香をあげ、手を合わせた。

クラブでは今後もアイバンク推進活動を継続していくが「昔ながらのやり方でアイバンク活動を続けていてはいけないのかもしれない。時代に合わせて変化していかなければ」と尾川会長は語る。というのも、登録をしていても、家族の同意が得られずに献眼まで至らないケースが多々あるからだ。クラブは今後、角膜移植の重要性を広く伝え、同意が得られやすい環境をつくることが必要だと考えている。どのような形であれば、アイバンク活動が人々により浸透するのか。40年以上活動を継続し、人々の反応を間近に見てきた東京八王子中央ライオンズクラブだからこそ、視力回復に傾ける思いは深い。

2022.01更新(取材・動画/井原一樹 写真/田中勝明)