取材リポート 施設自慢の食品を審査
イチ推しフードアワード

施設自慢の食品を審査 イチ推しフードアワード

毎年8月下旬に日本テレビ系列が放映している「24時間テレビ」では、各地で募金が行われるが、それに合わせて街頭募金や献血活動などを実施するライオンズクラブもある。

この24時間テレビに関連して少し変わった企画を行っているのが、長野白樺ライオンズクラブ(岡宮清吉会長/103人)だ。毎年、テレビ信州と共催して障がい者施設の利用者を招待する「チャリティー食事会」を実施している。1999年から開催しており、その様子はテレビ信州の24時間テレビで放映されてきた。食事会には県内の各施設から合わせて100人以上が参加。長野アークスホールで開催し、バイキング形式で長野県司厨士協会有志の会の調理師による料理を提供する。普段はなかなか食べられないメニューを食べられるとあって、参加者から好評を得ているイベントだ。

しかし新型コロナウイルス感染症が蔓延している2020年、21年は実施を諦めざるを得なかった。例会に関しても自粛が続き、他の奉仕活動も含めて長野白樺ライオンズクラブの活動自体、思うようにいかない日々が続いている。

そんな中、今期の岡宮会長は形を変えてどうにか活動する方法を模索している。例えば、毎年長野県児童福祉施設連盟や日本ボーイスカウト長野連盟長野第15団の子どもたちを集めて木の間伐を行い、自然に触れることで環境問題を考えてもらう「エコロジー大作戦」の代わりに、児童福祉施設に球根や土、肥料などを寄贈し、花を植えてもらう事業を来年春に実施する。

チャリティー食事会の場合は、どのように変更すれば障がい者施設の方々に喜んでもらえる事業になるか。4月ごろから検討を始めた長野白樺ライオンズクラブがたどり着いたのが、障がい者施設の作る食品のコンテストだ。コロナの影響で食品の即売会などが相次いで中止。売り上げが減った上に、PRが難しいという話を聞き、食事会を共催していたテレビ信州と協力して企画を進めていった。

対象は県内の障がい者施設。消費期限2週間程度を目安にした日持ちのする、一つ1000円程度の商品を募集した。県内各地から20件を超える応募があり、書類審査を経て10点が実食審査へと進んだ。これら10点は「太鼓判フード」に認定し、その中から最優秀賞に当たる「イチ推し太鼓判フード」を選ぶ。長野県の大豆やエゴマなど地元の食材を使用したものも多く、品質の高い食品がそろった。

実食審査は8月11日に長野市内のホテル国際21で行われた。当初はクラブの例会でメンバーが行う予定だったが、長野県司厨士協会有志の会や長野県社会福祉協議会の代表者らを集めて審査会という形で実施した。さまざまな組織から審査員を招くことで、より公平な審査を行い、フードアワードの信頼性を高めようという狙いがある。審査会ではこまめな消毒と換気を行い、感染対策を徹底した。この審査会の様子は8月22日にテレビ信州の24時間テレビの中で放映された。

さすが書類審査を突破しただけあって甲乙つけがたい商品ばかり。パッケージ、味共に申し分なく、16人の審査員を悩ませた。投票の結果、長野県松本市にあるカフェギャラリーてくてくの「信州・HEY!わっぱ菓子べんとう」がイチ推し太鼓判フードに選ばれた。

信州・HEY!わっぱ菓子べんとう

これはクッキーやくるみの飴がけなど7種類の菓子を曲げわっぱ風の弁当箱に入れたもの。名前の「HEY!わっぱ」は「平和」に掛けている。コンセプトは、さまざまな形や色の菓子を自分の好きなようにレイアウトするオリジナルの弁当づくり。コロナ禍で少なくなった外出を、この弁当づくりを含めて楽しめるようになってほしいという思いが込められている。長野白樺ライオンズクラブでは、信州・HEY!わっぱ菓子べんとうを始めとした太鼓判フードの購入支援も行う予定だ。チャリティー・イベントの賞品などに利用することで、知名度アップにもつながると考えている。

クラブとして初めての試みとなったイチ推しフードアワード。メンバーにとっては多くの障がい者施設がさまざまな自慢の商品を開発していると知る良い機会になったという。「これまでは先輩の始めた事業を継続してきましたが、コロナ禍になり、どの事業もやり方を工夫して行わなければいけなくなりました。それにより、こういう形で奉仕活動が出来るのだという発見も多くあります。今回の事業でもこんなにたくさんの施設が創意工夫をした商品を作っていることに驚きました。また、アワードのために商品を開発してくれたところもあり、施設の方の目標となる事業が実施出来たことは一つの成果だと思います」と岡宮会長は語る。

新型コロナウイルスの収束はまだまだ見通せない。長野白樺ライオンズクラブではイチ推しフードアワードの第2回を開催出来ないか検討している。また、施設では食品だけでなく、他の商品も作っている。フードアワードとはジャンルの違うコンテストを実施することも視野に入れる。コロナで思うように活動出来ないが、どうにかして多くの人に奉仕したい。その思いを胸にクラブは模索を続けていく。

2021.10更新(取材・動画/井原一樹 写真/長野白樺ライオンズクラブ)