フォーカス 全国初のUFO研究所で
夢とロマンの町おこし

全国初のUFO研究所で夢とロマンの町おこし
UFO研究所を支える飯野ライオンズクラブ・メンバーの菅野さん、齋藤さん、阿曽さん(左から)

6月24日が「UFOの日」なのをご存じですか? 1947(昭和22)年のこの日、自家用飛行機に乗っていたアメリカの実業家が高速で飛行する謎の物体を目撃し、マスコミはそれを「空飛ぶ円盤(Flying Saucer)」として全米に報じました。その後、同様の目撃証言が相次いで、アメリカ空軍が「UFO(unidentified flying object:未確認飛行物体)」と名付けて調査に乗り出します。その最初の目撃例があった日が、記念日になったのです。

今年のUFOの日、福島市飯野町にあるUFOふれあい館内に、国際未確認飛行物体研究所(以下、UFO研究所)が開所しました。私が会長を務める、いいの街なか活性化委員会が中心になって設立し、初代所長はミステリー雑誌「ムー」編集長の三上丈晴さんです。国内外からUFO情報を集めて発信し、さまざまなイベントを企画して地域を活気付けることが研究所の目的です。

国内初のUFO研究所ということで多くの新聞やテレビで報じられ、コロナ禍で減っていたUFOふれあい館の来館者も増えました。コロナ前は県外からが多かったのですが、今はほとんどが県内の方です。研究所にはUFOを見たという人から写真や動画がたくさん寄せられています。中には地元のお年寄りで、60年も前に見たというUFOの絵を描いて持ってこられた方もいました。これまで人に話さなかったけど、誰かに聞いてもらいたかった、という人も多いのかもしれません。

千貫森は遠くからもよく目立ち、昔から旅人の目印とされていた

UFOふれあい館は、千貫森(せんがんもり)という標高462.5mの山の中腹にあります。どこから見てもきれいな円錐(えんすい)形をした山で、町の象徴的な存在です。町には昔から、千貫森付近でUFOを目撃したという人が多かったんです。実は私も、不思議な光を見たことがあります。夜10時頃に町中の坂道を歩いていた時、オレンジ色に煌々(こうこう)と光るバレーボールぐらいの球体が、電柱の上ぐらいの高さの空中をゆっくり移動していくのを、一緒にいた知人と2人で見ました。町内の目撃証言は、同じようなオレンジ色の発光体、というのが多いのでしょう。

旧飯野町が「UFOの里」として町おこしを始める直接のきっかけになったのは、三十数年前の週刊誌の記事でした。千貫森をピラミッドになぞらえ、古代のUFO基地ではないかという説が掲載されて、全国的に有名になりました。UFOの目撃が多いことと、千貫森には磁場の影響か方位磁石が南北を指さないポイントが何カ所かあったり、周囲に変わった形の巨石群があったりといくつもの謎があることから、UFO基地説が生まれたようです。

私はその頃、飯野町商工会の青年部にいたのですが、町ではこのチャンスにUFOで町おこしをしようという機運が高まり、1992年に千貫森の中腹にUFOふれあい館が出来ました。ここには、日本のUFO研究の草分けである荒井欣一先生から寄贈していただいた約3000点の資料を収蔵しています。開館した当初、東京・品川にあった荒井先生のUFOライブラリーへ研修に訪れ、また、町で開いた「UFOサミット」では記念講演をしていただきました。そうした縁で、先生が亡くなられる前に、「飯野町になら」と資料を託してくださったんです。

未確認飛行物体に関する資料を展示するUFOふれあい館

UFOという奇抜なテーマで公営の施設を作るなんて、飯野のような小さな町でなければ出来なかったことだと思います。でも、大きな夢とロマンがあるじゃないですか。UFOふれあい館の他にも、街灯やバス停をUFO型にするなど、町を挙げてUFOの里の町おこしに取り組んできました。福島市との合併前には町の独自性を打ち出そうと、商店街に宇宙人の石像を設置して名付け親を募集しました。

新型コロナの影響を受ける前、UFOふれあい館には年間延べ3万人の来館がありました。UFOに関心のある人はもちろん、それほど関心のなさそうな親子連れも訪れます。実は、計画の段階で当時の町長から「館内にお風呂を作る」と言われて、「さすがにUFOにお風呂はダメでしょう」と言ったんですが、結局は2階に入浴施設が出来ました。ところがそれがよかったんですね。展示室を見学した後、千貫森の山頂へ登り、ふれあい館に戻ったらひと風呂浴びて汗を流すという風に、入館料400円(一般)で一日楽しめる施設になりました。

千貫森の登山道では宇宙人が道案内。頂上にはUFOコンタクトデッキがある

来年でUFOふれあい館が開館して30年を迎えます。今年に入ってアメリカでUFOへの関心が高まっていて、アメリカ国防総省はUFOの日の6月24日にUFO報告書を公表しました。このタイミングで再びUFOの里を盛り上げようと取り組んだのがUFO研究所の開設で、プロジェクトチームのリーダーは飯野ライオンズクラブ会長の阿曽隆一さんです。UFOふれあい館を所管する飯野町振興公社の菅野利男事務局長もクラブのメンバーで、地域の活性化のため一緒にがんばっています。

UFO研究所では一般から研究所会員を募って、集まったUFO情報を共有、研究する他、さまざまなイベントを実施していきます。6月26、27日には開所記念イベントとして千貫森でミステリーツアーを開き、実際に磁石を持って磁場の異常を確認するなどの体験をしてもらいました。町外から参加した人たちが口々に「前にこの場所でUFOを見た」と話していたのには驚きました。若い女性が多かったのも意外でしたね。

この秋には千貫森でUFOに見立てたドローンを飛ばすイベントのアイデアもあったんですが、今は難しい状況です。あと、ここは夜空の星がとてもきれいに見えるので、星を見る会を開催する案もあります。コロナが収束したら、きっとたくさんの方が訪れてくれると期待しています。今後はUFO研究所の活動による交流人口の増加を市街地の活性化につなげられるように努力していきます。

2021.10更新(取材/河村智子)

さいとう ひろし:1955年生まれ。(有)斎藤輪業商会代表。飯野町商工会会長、いいの街なか活性化委員会会長。長年「UFOの里」の町おこしにかかわり、今年6月に設立された国際未確認飛行物体研究所の活動を通じて、地域活性化と交流人口の拡大を目指す。98年4月飯野ライオンズクラブ入会、2005年度会長。