奉仕活動本物の味に触れる機会を
提供する子ども食堂

本物の味に触れる機会を提供する子ども食堂

10月28日、宇治市内の閑静な住宅街の一角にあるお好み焼き・鉄板焼き店で、京都王仁ライオンズクラブ(玉井政弘会長/20人)が主催する「子ども食堂」が開かれた。コロナ禍でしばらく中断していたが、9月に再開して以来2度目となる。今回はいつも開催している会場ではなく、クラブ・メンバーが経営する店舗の定休日を利用し、鉄板でハンバーグや野菜を焼いて振る舞うこととなった。

子ども食堂は、主に地域の子どもたちや保護者などを対象に食事を提供するコミュニティーで、NPO法人や地域住民によって運営されている。クラブでは2018年9月から子ども食堂をクラブ事業の中心に据え、活動エリアであるJR小倉(おぐら)駅周辺の親子を対象に月に1度のペースで実施してきた。毎回楽しみにしてくれる親子も増えてはきたが、ここに至るまでには紆余曲折(うよきょくせつ)があった。

京都王仁ライオンズクラブは、在日韓国人を始め日本に定住する外国人が集うクラブとして03年7月18日に結成されたが、4年前、会長の引き受け手がいないなどの理由で活動がままならなくなり活動停止状態に陥った。現在、子ども食堂の調理など中心的な役割を果たしている玉井会長は、まだこの時は正規のメンバーではなく準会員としてクラブの活動に関わっていた。そのせいもあって、この活動停止をどこか他人事のように感じていたという。だが、クラブ結成に尽力したメンバーから「何とかクラブを復活させてもらえないか」と頼まれて心が動いた。既存のメンバーに加え新しくメンバーを迎え、玉井さんが会長を務めることでクラブは再スタートを切ったのだ。

以前、玉井さんはテレビ番組で、日本にも食べるのに困っている子どもが想像以上に多く存在し、そういう子どもたちに手を差し伸べる「子ども食堂」なるものがあることを知った。「機会があればいつか自分もやってみたい」と常々思っていたが、クラブの会長になったことでその思いは実現することとなる。調べてみると、JR小倉駅近くでも2カ所で開催されており、子ども食堂は意外に身近にあった。お寺や学校、表立って告知はせずひそかに実施している所など、形態や開催場所もさまざまだ。

「何カ所か見学しましたが、皆さん口をそろえて『子どもはなかなか食べに来てくれない』と言います。どうやら無料で食事をしている子に対するいじめがあるようで、保護者も子どもを行かせたがらないというのです」(玉井会長)

ある子ども食堂では、子どもたちが訪れるようになるまでに2年近くを要したという。そういう事情があることも聞いていたため、クラブで子ども食堂を開くと決めた時、まずは子どもたちが参加しやすい環境づくりから考えた。
「宇治子どもチャレンジスクール」と銘打って、近隣の大学生やメンバーが経営する会社の社員の手を借りて学習支援や工作教室といった機会を設け、その流れでご飯を食べて帰ってもらうというプログラムを作った。参加への障壁を出来るだけ低くした施策だったが、ふたを開けてみるとこちらの懸念も何のその、近隣の子どもたちは最初から食事目当てでやって来た。最初の半年でコンスタントに20人近くは集まるようになり、当初月2回の開催を目標にスタートしたチャレンジスクールだったが、現在は月に1度、純粋に食事をしてもらう活動に落ち着いている。

子ども食堂の視察で、玉井会長が気になったことがもう一つある。

「どこも皆さんがんばって作っていますが予算の問題があるのでしょう、子どもたちを引き付けるだけの味になっていない印象でした。だから自分たちがやるならおいしいものを食べて帰ってもらいたい。本物の優しい味を知ってもらえる機会になればと思っています」

例えば、だしは素材から丁寧に取るなど、なるべく出来合いの調味料などは使わず、手づくりの料理を提供するようにしている。高校生以上からは300円、小学生以下は100円の料金をもらってはいるが、当然採算は合わない。そのためクラブでは、趣旨に賛同してくれる個人や団体から寄付を募り、それを原資に事業を計画・実行している。

おいしいものを食べてもらうための準備も思った以上に大変そうだ。毎回メニューを考案し、レシピもその都度一から開発している。おいしいと言われている店に足を運んでは味を確かめ、時には頼み込んでレシピを教わることもある。本番までに一度再現してみる時間も必要だ。この日のメニュー、肩ロースと中落ちカルビを使った牛肉100%のハンバーグや特製デミグラスソースも、前日にメンバーら3人で約4時間掛けて仕込んだものだが、仕込み以前にそうしたリサーチや試作などの課程を経ている。また今回のメニューにある焼き野菜は、協力者から提供されたもの。頂き物をどう使うかも知恵の絞りどころだ。

他の子ども食堂では、対象は子どもだけの所もあるが、京都王仁ライオンズクラブでは保護者同伴をむしろ歓迎している。親子で来てもらい、この機会をきっかけにコミュニティーを築いてほしいという考えがベースにあるからだ。
「学校とは違う顔ぶれで遊ぶ機会が出来、子どもも喜んでいる」
「一人っ子なので、ここでお友達が出来たらいいと期待している」
「立場が似た親同士、会話も弾む」
など、食事以外にこの機会をうまく利用している声が参加者からも聞こえてくる。

本来は17時から19時までゆっくり過ごしてもらうのだが、今は新型コロナウイルスの感染予防対策で17時からと18時からの入れ替え2部制で実施。以前よりは駆け足の食事になるが、この日も20人の親子が参加してくれた。

「コロナの影響で、親も子も友達同士なかなか会えなかったでしょうから、良い機会を提供出来ているのではないかと思っています。小さなお子さんがいる親御さんもゆっくり食べてもらえるし、気晴らしになっていると感じます」(玉井会長)

メニューのバリエーションもノウハウも相当たまってきた。今後は開催場所を拡大し、より多くの親子に楽しんでもらう計画もあるという。

2020.12更新(取材・動画/砂山幹博 写真/宮坂恵津子)