奉仕活動知っているようで知らない
糖尿病予防の講演会

知っているようで知らない 糖尿病予防の講演会

「日本人最初の糖尿病患者は誰だと思いますか?」
そんな歴史ネタからスタートしたのは、1月27日に行われた「糖尿病予防講演会ワークショップ」。これは糖尿病の理解を深め、予防の実践を促すことを目的に、名古屋名南、名古屋サウス、名古屋葵、名古屋緑、名古屋樟の五つのライオンズクラブが合同で開催したものだ。会場となったJR南大高駅(名古屋市緑区)に隣接する南生協病院の大会議室には、糖尿病に関心を持つ市民160人が集った。

ライオンズクラブ国際協会は重点奉仕分野として、視力保護や飢餓、環境、小児がん、そして糖尿病予防を掲げている。世界的に増え続けている糖尿病のまん延を抑え、糖尿病と診断された人々の暮らしを充実したものにするのが目的だ。こうした方針に呼応して企画されたのが今回の講演会だ。

「糖尿病は他の病気との合併症も多く現代人が抱える身近な問題でありながら、知らぬ間にじわりじわりと体をむしばんでいる怖い病気です。本や雑誌、テレビ番組などで触れる機会はあるものの、実際のところよく分かっていないのではないかと気付きました」
そう話すのは、講演会開催の発案者で、今年度五つのクラブを束ねる役職を担っている下村直己さん。糖尿病について理解を深め、効果的な予防法を知るための勉強会のようなものを開いてはどうかと、自身が所属する名古屋名南ライオンズクラブを含む5クラブに提案した。そして、クラブの例会で健康に関するスピーチをお願いするなど以前から付き合いのある南生協病院にアドバイスを求めたところ、病院側も興味を示して協力に手を挙げてくれた。こうして、五つのクラブと南生協病院とのコラボレーション企画がスタートした。

講演会は3部構成で実施された。第1部は、名古屋大学名誉教授で南生協病院健診ドックセンター長の押田芳治医師による基調講演「糖尿病を知り、その対策を考える」。糖尿病専門医の立場から、病気の原因や対策など糖尿病全般について説明した。冒頭で挙げた「日本人最初の糖尿病患者は?」の問いは押田先生の講演での一コマ。日本糖尿病学会が過去の文献を調べて最初の糖尿病患者に認定したのは、平安時代中期に摂関政治で権力を握った藤原道長。貴族のぜいたくな生活が影響したのか道長は肥満だったらしく、最終的には糖尿病による合併症で苦しんだと推測されている。

こうした興味深いエピソードの他、押田先生の周りで起きた身近な話題を交えた話は分かりやすく、聞き手を飽きさせない工夫が随所に見られた。また、講演の中では、後に続くテーマ「食事」や「運動」を想起させる話題にも触れ、構成としては3部に分かれつつも相互に連動している印象を受けた。下村さんはこの点を次のように話す。
「参加者の多くが糖尿病について基本的な知識を持っているはずなので、どうしたら我々独自のものが出来るかという点に留意して企画を進めました。一つは、難しい言葉ではなく、なるべく平易な言葉でお伝えするということ。そしてもう一つは、基調講演の他に『食事』と『運動』を取り入れるということ。自分の普段の食生活と比較しながら考えたり、実際に体を使って動きを覚えたりすることで、単に知識を増やすだけではなく、実生活に取り入れやすいプログラム構成を練りました」

第2部のテーマは食事。「今日からできる! ? 糖尿病と食事の関係」と題して、同病院の栄養支援室科長で管理栄養士の深谷英幸さんから、すぐにでも取り入れられる糖尿病予防のコツを学んだ。例えば、根菜類や調味料、つなぎに含まれる「隠れ糖質」には注意が必要だと話す。寒い時期に食べたくなるあんかけうどんの「あん」もその一つ。かたくり粉(澱粉)が使われているため、血糖値が一気に上がってしまう。また、体に良いことは間違いないが、バナナも血糖値が急上昇する果物なので摂取には気を付けて、と呼び掛けた。普段の食生活に直結する身近な例で、メモを取る参加者の姿が目立った。

座学スタイルとは打って変わり、実際に体を動かす「糖尿病予防のためのトレーニング有酸素運動」に挑戦するのが第3部。講師を務める加藤真裕さんは、同病院と同じ建物内にあるスポーツジムのマネジャーだ。
「糖尿病だから運動しなきゃと言って運動を始める方がいらっしゃいますが、長続きしませんよね。理由は簡単。途中でつまらなくなっちゃうから。運動をする目的は何でもいいので、やれることからやっていくというのがコツ」(加藤さん)
まずは自分で楽しそうと思った運動から始めて、いつのまにか健康診断の結果が良くなり、肩こりや腰痛も改善され、痩せて見栄えも良くなって、血糖値も改善し、「なんだかうれしい」となるのが理想だと、加藤マネジャーは言う。早速、いくつかの運動を実践することとなった。

最初は、椅子の脇に立って片脚ずつ前後に振る運動。休憩を挟みつつ、脚を振ったり、上げたり、身体を伸ばしたり、腹筋・背筋を使う運動を何種類か行った。すると、会場のあちこちから悲鳴のような声が上がったので着座。今度は座った状態で脚を伸ばし、足先を触るというエクササイズ。なかなか思うように手が届かない人が多数いたが、これを見た加藤マネジャーの「届かない方は、脚が長い方ということにしておきます」というフォローで会場がドッと沸く。いつのまにか参加者は上着を脱いでエクササイズに没頭。会場は熱気に包まれた。

「参加された方が少しでも糖尿病になるリスクを減らすことが出来たらいいと思います。既に糖尿病にかかっている方にとっても、症状を改善するヒントになれば幸いです」
下村さんは、この講演が普段の生活を見直すきっかけになってほしいと期待を寄せる。今回は、5クラブの合同事業として開催したが、要望があれば今後の対応も検討したいと話していた。

講演会の参加者には受付で記念品が渡された。黄色とピンク色のマカロン型の付箋(ふせん)で、外袋には「これは食べられませんので血糖値に変化はございません」、付箋本体には「早口ことば・3回続けてね!糖尿病予防」と書かれている。
「ちょっとした思い出の品ですが、後になって糖尿病予防のことを思い出してもらえればうれしい」(下村)

継続こそが物を言う。記念品一つとっても、ライオンズの思いが凝縮されているような心遣いを感じた。

2019.03更新(取材・動画/砂山幹博 写真/宮坂恵津子)