取材リポート 心も会話も弾む
お花の奉仕

心も会話も弾む お花の奉仕

通所介護(デイサービス)施設の利用者に、お花を生けてもらい、お茶を味わい楽しんでもらう活動を行っているのは、柏なの花ライオンズクラブ(渡辺洋子会長/30人)。奉仕先である北柏デイサービスセンターが開所した2000年から今日まで、高齢者や障害者の方たちと一緒に華やかで楽しいひと時を過ごしている。

今年最初に訪問したのは1月第3水曜日の23日。「お花とお茶の奉仕活動」の日は、デイサービスの利用者にとって2カ月に一度のお楽しみとあって、色とりどりの花と共にやって来る柏なの花ライオンズクラブのメンバーを首を長くして待っていた。

この日クラブが用意した花は4種類。白いスプレーストック、ピンクのスプレーカーネーションに黄色のスイートピー、そして丸いピンクのつぼみがかわいいヒペリカム。それぞれ単体でも十分に存在感のある花が、1本ずつ利用者へ配られた。花が配られたそばから、開始の合図を待ちきれないように手に取って眺めては、どのように生けようかと考えを巡らせている人もいた。この時を待ちわびていたことがよく分かる光景だ。

もともとは老人ホームでシーツを取り替える奉仕活動を長く行ってきた同クラブ。活動を始めて7年が経過したところで区切りを付け、次なる奉仕活動をどうするかと考えていたちょうどその頃、北柏デイサービスセンターが開所した。クラブ内で検討し、この施設を支援することを決めると、どんな内容の奉仕活動に取り組むのがよいかと議論になった。

「デイサービス施設では、歌を歌ったり体操をしたりと、毎日いろいろな行事やレクリエーション活動が行われています。そういう活動とかぶらず、なおかつ自分たちに何が出来るかを考えた時に、『お花』がよいだろうということになりました」
そう話すのは、結成当時からのメンバーでこの活動の始まりをよく知る長澤千鶴子元地区ガバナー。柏なの花ライオンズクラブは1993年に千葉県初の女性クラブとしてスタートした。デイサービスセンターでの活動は、利用者に花を生けてもらった後に、お茶とお菓子を振る舞って共に楽しむという内容で、花の名を持つこのクラブらしい実に華やかなものだ。今では利用者が「水曜日が待ち遠しい」と楽しみにしており、施設側も大きな期待を寄せる活動となっている。

北柏デイサービスセンターの利用定員は35人だが、利用者の順番待ちが発生する状況。その一方で、クラブのメンバーは結成から10年余りで当初の半分の20人以下に減り、平均年齢も60歳を超えていた。
「この活動も最初の頃は毎月行っていたのですが、メンバーが減少したことで2カ月に一度のペースで開催せざるを得なくなりました」(長澤)
奉仕の志はあるものの、需要に対し供給が追いつかない事態に、クラブは手をこまねいていたわけではない。一念発起してクラブ改革に取り組み、仕事や子育てに忙しい若い世代のクラブ支部を発足させた。これを機に女性会員のみだったクラブ・メンバーは男女混合となり、その後も会員増強の努力をしながら活動を続けてきた。

この日の活動には7人のメンバーが参加。エプロン姿になって施設の方と連携し、花材の準備や利用者が花を生ける手伝いをし、抹茶をたてて振る舞った。ただ利用者はほとんどがリピーター。サポートを必要としないほどに手慣れた様子で花を生けていく。あっという間に完成させて、花を眺めながらおしゃべりに興じる姿が目立った。テーブルの上に色鮮やかな花が並ぶと一気に空間が明るくなり、隣の人との会話もいつも以上に弾むようだ。利用者は自分が生けた花を自宅に持ち帰り、玄関や窓辺に飾って楽しんでいるという。

「18年もやらせて頂くと、多くの利用者さんと顔なじみになります。そんな皆さんとお花やお茶を通じて触れ合うことが出来、私たちライオンズも心が和みます。お花に関しては素人のような私に『先生、このお花どう?』なんて声を掛けてきてくれる利用者さんもいて、『ああ頼りにされているんだな』と実感しますよ。1時間ほどの短い機会ですが、利用者さんと一緒になって作り上げているアクティビティだと改めて思います」(長澤)

和やかに過ごした時間が終わる間際、利用者の一人から「いつまでも長生きして、お花を生け続けたい」という声が上がった。そんな思いは、この日この場に来たくても来られなかった利用者の方にもきっとあるはず。こうした声を受け、クラブはこの活動を毎月1回のペースに戻すことを目下の目標としている。

2019.02(取材・動画/砂山幹博 写真/宮坂恵津子)