取材リポート 串本港で海中清掃
ボランティア活動

串本港で海中清掃ボランティア活動

9月2日、和歌山県串本町にある旧フェリー乗り場で、和歌山葵ライオンズクラブ(門脇孝司会長/45人)と串本ライオンズクラブ(小森正剛会長/40人)による合同の海中清掃が実施された。昨年に続き2回目の活動で、両クラブ会員の他、和歌山大学の学生を主体とする和歌山レオクラブの会員ら約60人が参加した。

和歌山葵ライオンズクラブには2016年に結成されたダイビングの同好会があり、インストラクターの資格を持つ会員を中心に会員7人が所属している。同好会発足に当たってメンバーたちは、せっかくライオンズクラブの仲間で作ったのだから、と社会貢献に結び付く活動を模索した。当時、環境省が実施した調査で、吉野熊野国立公園内のサンゴ群集が、オニヒトデなどの食害に遭っていることが判明。そこでダイビング部では、自分たちが住む和歌山の海の環境を守ろうと、オニヒトデの駆除ボランティアを一つの目標に定め活動を始めた。

翌年3月、和歌山県内のライオンズクラブ会員が一堂に会し、親睦を深めながら意見交換をする会員交流会が、和歌山市と串本町のほぼ中間にあるみなべ町で開かれた。和歌山葵、串本両クラブの会員たちもこれに参加。お互いの活動を報告し合う中で、和歌山葵ライオンズクラブがダイビング部を作り、オニヒトデの駆除や海中清掃など海の環境保全に取り組もうとしている話も出た。串本にもサンゴ群集があることから、両クラブの会員たちはこの話題で盛り上がり、串本ライオンズクラブから、海中清掃を実施する際は協力させてほしいとの申し出があった。そこで和歌山葵ライオンズクラブはこの件を理事会にかけ、海中清掃をクラブの事業とすることを正式に決め、改めて串本ライオンズクラブへ協力要請を行った。

本州最南端の串本町は海岸部が吉野熊野国立公園に指定され、国の天然記念物である橋杭岩(はしぐいいわ)や潮岬、世界最北域のテーブルサンゴ群生地などがあり、日本初の海中公園になったエリアはラムサール条約にも登録されている。串本では漁業に観光にと、こうした海の恵みを活用した町づくりがなされ、またウミガメが産卵のために上陸する上浦海岸の清掃など、豊かな自然を守り受け継ぐための市民活動が各方面で行われている。串本ライオンズクラブでも、名勝・橋杭岩などの清掃奉仕を実施する他、近隣の新宮、勝浦両ライオンズクラブと共に、毎年合同で環境保全活動を行ってもいる。

そんな串本ライオンズクラブだけに、和歌山葵ライオンズクラブからの協力依頼は、願ったりかなったりの話だった。ただ、串本ライオンズクラブにはダイビングをする会員がいないこともあり、海中清掃をどのように実施したらいいか知識がなく、まずは下調べから始めた。すると、町役場や、串本町に本所がある和歌山東漁業協同組合などからの情報で、串本でもこれまでに海中清掃が行われていることを知った。

その清掃活動は、日本釣振興会が中心となって実施されているものだった。更に調べると、同会では07年から、ボランティア・ダイバーの協力を得て各地の湖や海で水中清掃を展開。串本でも数年前から継続的に活動が行われており、その年も6月10日に串本漁港、7月22日には須賀漁港で活動が計画されていることを聞きつけた。そこで両クラブは7月22日の水中清掃を見学。一連の活動内容や準備すべき資材などを学び、串本ライオンズクラブ側は和歌山葵ライオンズクラブのダイビング部が活動しやすいよう受け入れ態勢を整え、それに応えるように和歌山葵ライオンズクラブはダイビング技術習得のため潜水練習を繰り返し本番に備えた。

そして昨年8月20日、串本町と和歌山東漁業協同組合の後援を得て、第1回の海中清掃を須賀漁港で実施。環境を保護する活動は、ちょうどライオンズクラブ国際協会の創設100周年記念奉仕チャレンジの一つになっていたことから、同キャンペーンに参加する形で行った。この時は漁港内の水中からペットボトルや空き缶を始め、漁具、テレビ、電気のこぎりを引き揚げるなどの成果を上げた。

その後、両クラブでは今年も同様に活動することを決め、7月24日に和歌山葵ライオンズクラブから門脇会長らが串本を訪問し、小森会長を始め串本ライオンズクラブ会員と共に清掃を実施する候補地4カ所を視察。その中から、旧フェリー乗り場を選んだ。

今回、両クラブは例会振替にして多くの会員が参加、和歌山レオクラブからも9人が協力してくれ、昨年より多くの人手で作業に当たった。潜水班は13人で編成され、ダイビング部の会員7人とダイビングのライセンスを持つレオ会員4人、会員知人のボランティアに、日本釣振興会の水中清掃にも協力している地元のダイビングショップ・串本マリンセンターの中村洋介さん、赤松ダイバーズの赤松佳樹さんらが加わり、4班に分かれて海中からごみを回収。陸上班は水中からごみを引き揚げたり、それを分別したりして、約1時間半にわたって活動した。

水の中には、船を保護するためのフェンダー代わりに使われていた古タイヤがたくさん沈んでおり、それらが見つかった時はトラロープを結びつけ、陸上班が水中から引き揚げる。これがまた重労働。古タイヤには大量の泥が詰まっており、かなりの重さがある。この日はユニッククレーンも待機していたが、場所によっては人力で引き揚げるしかなく、トラック用の大型タイヤの場合は2人掛かり、3人掛かりで引っ張り揚げるなど、陸上班の作業もきつそうだった。

海中清掃は危険を伴う潜水作業があるため、両クラブでは安全面を第一に活動に取り組んでいる。作業中には和歌山葵ライオンズクラブが手配した監視船1艇と、串本ライオンズクラブ会員が所有する船1艇が出動、ダイバーを見守ると共に他の船舶が現場に入ってきた時のための警戒に当たった。また、潜水班も念のためダイビング用のヘルメットを着用して作業に臨んだ。

潜水班として海中のごみ回収に当たった和歌山葵ライオンズクラブの門脇会長は、
「今回は参加者が多かった分、第1回よりもたくさんのごみを回収出来ました。大きなタイヤなどもあって悪戦苦闘した場面もありましたが、無事引き揚げられて良かったと思います」
と話した。一方、受け入れ側の串本ライオンズクラブ・小森会長は、
「みんなの財産である海を奇麗にしたいというのは串本町民共通の思いです。これからも和歌山葵ライオンズクラブからの申し出がある限り、私たちもそれに応えていきたいと思っています」
と、合同海中清掃の継続に向けて力強く語っていた。

2018.10更新(取材・動画/鈴木秀晃 写真/田中勝明)