取材リポート SUPER GT開幕戦で
ステーキ販売

SUPER GT開幕戦でステーキ販売

4月7〜8日にかけ、日本のオートレースファンが待ち望んだSUPER GTの2018シーズン開幕戦「2018 AUTOBACS SUPER GT Round 1 OKAYAMA GT 300km RACE」が、美作(みまさか)市にある岡山国際サーキットで開催された。年間40万人以上を動員する人気シリーズであるSUPER GTはF1と違い、市販車と同じような外見のレーシングカーが走るのが特徴。また、シーズンポイントに応じて重りを載せなければいけないウェートハンデ制、2人のドライバーによる交代制の導入、異なるクラスの車が同時に走るレース形式など、さまざまな要素があり、見どころ満載だ。国内最高峰のレースであり、今年は元F1ドライバーの小林可夢偉選手や、F1レースの17シーズンで15勝、09年のF1ワールドチャンピオンになったジェンソン・バトン選手がフル参戦することでも注目を集めている。

開幕戦は毎年、岡山国際サーキットで開催される。全国からファンが訪れるこのレース会場で、美作ライオンズクラブ(中村末廣会長/15人)はテキサスステーキを販売している。「テキサスステーキ」というのはクラブの造語。もともと、湯の郷温泉で実施されていたハーレーフェスティバルに出店しており、肉の塊をその場で焼き、切り取って販売する豪快なスタイルから名前をつけた。その派手な見た目とキャッチーなネーミングが、今はSUPER GTファンの心をつかんでおり、2日間で150kg以上を売り上げる大会の名物メニューとなっている。毎年楽しみにしてくれていて、テントで準備をしていると「まだ肉焼けないの?」と話し掛けてくる人もいるという。

90年代の前半、クラブは奉仕活動のための資金調達事業を実施しようと考えていた。その時に話があったのがハーレーフェスティバルへの出店だった。これは、全国からハーレーダビッドソンのファンやオーナーが集まる祭り。テキサスステーキ販売は好評を博した。しかし、湯の郷温泉でのハーレーフェスティバル自体が2000年を最後に中止となってしまう。クラブでは他の出店先を探すことになる。そんな中、中村末廣会長の知り合いがサーキットにおり、06年からSUPER GTでのテキサスステーキ販売を許可してもらえることになった。ところが、このSUPER GTはハーレーフェスティバルと比べて動員数が桁違い。飛ぶように売れていく状況に、初めは驚いたという。だが、回を重ねるにつれて、人の配置なども見直し、今では皆が慣れたものだ。それでも、決勝に当たる2日目の昼は長蛇の列が出来、メンバーそれぞれが大車輪の活躍をしても足りないほど。以前は全てをメンバーで行っていたが、平均年齢の上昇と、会員数減少により難しくなった。最近はこの時だけ肉屋さんに手伝ってもらうが、それ以外は全てメンバーで準備から販売までを行っている。

テキサスステーキの売り上げは全て事業費に充てている。「ライオンズ文庫」という名の下に書籍の寄贈、凧揚げ大会や剣道大会の実施など、さまざまな奉仕活動に使われている。災害が起きた時は義援金として被災地に送金することもある。決して人数が多いとは言えない美作ライオンズクラブが、クラブ規模の割に多くの活動が出来ているのも、テキサスステーキの売り上げに負うところが大きい。この活動を通してクラブの知名度も上がっている。

そして、事業の成功を語るのに欠かせないのが、会員の夫人たちの存在だ。昨年から始めたおにぎり販売では朝6時から彼女たちが握ったものを現地で販売している。会員よりも朝早くから働いてくれているのだ。現地ではパックを準備し、レタスを入れ、輪ゴムをかける、など手が止まることがない。ほぼ立ちっぱなしで肉を焼き続ける会員もハードだが、彼女たちの働きなくしては、お客様に肉を届けることは出来ないのだ。

一方で車好きにとってはレースを間近で見られるという利点もある。クラブではそこをアピールし、車好きの若者をメンバーに入れられないかと考えているが、若者の車離れが進んでおり、勧誘には苦労しているという。それでも、2日目が終わった時の達成感は何ものにも代え難い。クラブでは今後もこの事業を継続し、他の奉仕活動の質を上げていきたいと考えている。

2018.06更新(取材・動画/井原一樹 写真/関根則夫)