取材リポート 家族で陶芸体験。きっと、
忘れられない思い出になる

家族で陶芸体験。きっと、忘れられない思い出になる

奈良県大和高田市を活動拠点とする大和高田ライオンズクラブ(吉田武史会長/48人)は、2017年10月9日に晴れてチャーター・ナイト55周年を迎えた。この節目の機会に「青少年育成に役立ててほしい」と大和高田市に400万円を寄付したが、これに象徴されるように、クラブ結成以来、日本の将来を担う青少年の健全育成を奉仕活動の中心に据えてきた。そして今年度、クラブが青少年育成のメイン事業に選んだのは、滋賀県へ赴いての陶芸体験である。

11月18日土曜日の朝、大和高田市役所の駐車場に集ったのは、この陶芸体験への参加を希望する市内の小学1年生から6年生までの児童と保護者174人。ライオンズのメンバーと共に3台のバスに分乗して9時30分に大和高田を後にした。行き先は、たぬきの置物の発祥の地として知られる滋賀県甲賀市の信楽だ。朝からあいにくの雨で到着が遅れたが、お昼前にはたぬきの置物が屋外にずらりと並ぶ目的地の信楽陶苑たぬき村に到着した。

大和高田ライオンズクラブでは、青少年育成のメイン事業は、その年度の会長の意向に沿って行うことになっている。前年は、子どもたちに日本人の文化のルーツに触れてほしいという前会長の思いから「邦楽鑑賞会」を開催。尺八や三味線、箏、琵琶などで奏でられるプロの演奏を楽しんだ。

2017年度の吉田武史会長が選んだのは陶芸。家族が共に行動する機会が減ってきていることを憂い、1日中一緒に楽しめる「家族ふれあい陶芸教室」の開催を思いついた。

「これからの時代を担っていく子どもたちにはいろいろな体験をさせたいと常々思っていました。『家族一緒に何かをする』という機会も当たり前のようですが、青少年の健全育成にはなくてはならない経験です。陶芸は家族で一緒に作ったことが思い出になるだけではなく、完成したものが手元にあれば、そこでも会話が生まれる一石二鳥の体験です」(吉田会長)

それにしても奈良県のクラブが、なぜ滋賀県での開催に踏み切ったのだろうか。

「いくつか候補がありましたが、知名度や参加者の受け入れ可能な場所としてのキャパシティーを考慮すると、全てをクリア出来るのがここでした。また、参加者の移動が伴う点もそれほど心配していませんでした。というのも当クラブでは、大和高田市内にある特別支援学級の子どもたちを国立曽爾少年自然の家へ1泊旅行に招待する活動を約30年継続しています。スケジュールの策定や役割分担にはノウハウがあるので、今回のバス移動に生かすことが出来ました」と森川英司幹事は話す。

陶芸教室は、市の教育委員会からの期待も大きい。後援を取り付けただけではなく、市内八つの小学校への連絡と、月曜日のホームルームの時間に案内書を配布してもらう協力も得られた。500円の参加費を負担してもらえれば、信楽までの往復のバス代、陶芸の製作費、昼食代、作品送料などをライオンズクラブが負担するといった内容で、参加はファクスで募った。募集期間を7日間取っていたが、いざ募集を始めると、ものの40分で二百数十人の応募が殺到するという予想外の結果となった。

「もっと枠を増やせませんか?」「今年は信楽ですが、来年はどこでやりますか?」といった、うれしい反面、対応の難しい問い合わせが保護者から相次ぎ、お断りの連絡だけでも大変な件数に上った。

到着後、昼食をとった一行は早速工房へ移動。バスの中で一度説明は受けたが、再度「手びねり」の手順を確認した。粘土は一人800gで、何を作るかは自由だが、作る作品は1点のみというのがルール。2cmほどの厚さで底を作り、残った土をひも状にしてどんどん上に積み上げていくのが手びねりでの器の作り方。子どもたちは、お父さんやお母さん、巡回する指導員と相談しながら作品づくりに没頭した。お皿やカップ、花瓶といった実用的なものが目立ったが、中にはオブジェのような作品も。じっくり時間をかけて作った作品には、それぞれに個性が表れていた。説明と製作で1時間30分を予定していたが、ほとんどの親子が1時間ほどで作業を終え、たぬき村を散策して過ごした。この後、作品は窯で焼かれ、2カ月後に自宅へ配送される。どんな仕上がりになっているか楽しみだ。

作り終わった後の保護者に話を聞くと、「機会があればまた参加したい」という声が多数あった。次回は陶芸ではない可能性が高いが、青少年育成事業に力を注ぐ大和高田ライオンズクラブらしい魅力ある体験が出来るアクティビティになることは間違いなさそうだ。

2018.01更新(取材・動画/砂山幹博 写真/宮坂恵津子)